
界的に有名な某 RPG の開発者に、興味深い話を聞いたことがある。いまから数年まえ、アメリカはテキサスでのことだ。「ゲームとは、じつに特殊なメディアである。映画であれ小説であれ、作り手なら誰しも、「できれば最後まで」自分たちの創作物を楽しんでほしいと思うものだ。それが何年もかけて完成させた作品なら、なおさらである。
でもゲームでは、作り手がみずから、受け手が「最後まで到達しづらくなるように」多くの障害を設けなくてはいけないのだ。たとえば、絶対にプレイヤーに体験してほしい結末を思いついたとする。今回の僕の新作だ(ここでウインク)。すると今度は、どうやってそこまで「進ませないようにするか」も、わざわざ考えないといけないわけだ。ゲームにはプレイヤーの達成感も要求されるからね。その障害は簡単すぎても難しすぎてもダメだし、実際のところ、それが障害だと感じさせてもいけない。そのさじ加減が難しいし、だからこそ作りがいがある」――といった話だった。
なるほど、よいゲームの作り手にはツンデレの素養――「先になんか、進ませないんだからね!」という態度を取りながら、手を替え品を替えてプレイヤーを先へと導く手腕――も求められるといったところだろうか?
近年、海外の優れたゲームがつぎつぎと日本でもリリースされ、日本 VS. 海外といった形で何かと比較されることも多くなってきた。昔、イギリスのあるゲーム誌の編集長に「海外ゲームとひと口に言っても、たとえば北米とイギリスでは作風も嗜好も全然違う」と説教されたこともある身としては、あまり安易にひと括りにもできないのだが、ここでは便宜上、国産と海外産の 2 回に分けて、現在発売ラッシュが続いている Xbox 360 RPG の魅力に迫ってみたい。

きほどのツンデレの話でいうと、日本の RPG はデレ寄りかもしれない。細やかな気配り。もてなしの精神。ソフトを買ってくれた人を、値段分きっちり楽しませようという責任感――ある意味、日本のゲームは非常にマジメだ。「ゲームをゲームとして楽しむ」という前提さえ受け入れれば、あとは波乱万丈のストーリーなり、親切なシステムなりに安心して身を委ねながら楽しむことができる。
とくに RPG などは、作り手の目線が、海外と比べるとより広く(低く)設定されていることが多い。それゆえに、その「手取り足取り」感――より多くの人が、より確実に一定以上の楽しみを得られるようにという配慮――が、反面、ゲーム上の約束事や制限にもなり得る。「先が見えているのに進めない透明な壁」の裏には、大抵何か親心が……というわけだ。
日本の RPG の特徴として、キャラクター主導という点もよく挙げられる。マンガやアニメ同様、いかに主人公に感情移入できるかが、プレイヤーの満足度を左右することは多い。ときに主人公たちの目線で、ときに神のような視点で物語を動かし、登場人物と彼らの世界の行く末を見届けていくおもしろさは、とりわけ日本の RPG ならではの醍醐味だと思う。
もちろんゲームである以上、仮にキャラクターや大筋の物語が決まっていても、その遊びかたが異なれば、プレイヤーのゲーム体験も異なってくる。たとえば気まぐれな筆者は、ある街で全員に話を聞いたと思ったら、つぎの村ではほとんど人に話しかけずに先を急ぐといったことをよくする。結果、武器やアイテムを取らずに苦労したり、無駄足を踏むことも少なくない。でも、それが筆者だけのストーリーなり、ゲーム体験となって、酒の肴やこうした雑文のネタにもなってくれるわけだ。
もっと言えば、プレイ中に体験した現実の出来事や気分さえ、そのゲーム体験の一部と考えることもできるだろう。友人と競い合って解いた RPG は楽しい思い出だし、冒険中に人生初の食中毒にかかり、数日間テレビとトイレを往復しながら進めた RPG は苦い記憶として残る(笑)。RPG は長期に渡ってプレイするという性質上、そういった実体験とリンクする確率が高いようにも思える。まして Xbox 360 にはプレイ履歴機能があり、(オンライン状態でプレイした場合)実績を解除した日時まで記録されるのだから、よいプライベート ダイアリーとして活躍してくれるはずだ。

これから「はじめよう! RPG」という人にとっての問題は、「どれから遊び始めるか」という点に尽きるだろう。個人的には、本特集サイトに集合しているムービーなどをチラ見して、キャラクターなり、世界のテイストなり、何かしら「コレ!」と感じたタイトルに手を伸ばしていただくのがベストとも思う。その選択もまた、アナタだけの貴重なゲーム体験となるかもしれないからだ。
ここではあくまでも参考情報として、最近の新作についての個人的なインプレッションなどを紹介しておきたいと思う。
まずは、『テイルズ オブ ヴェスペリア』。日本のゲーム、マンガ、アニメの魅力を「いいとこ取り」して煮詰めたような、これぞ最先端のジャパニーズ RPG とも称すべき大作である。豊富かつ巧みな描写で、自然と愛着を抱かせてくれるキャラクターの確かさ。経験やモチベーションに併せて遊び込める戦闘をはじめ、至れり尽くせりのゲームシステム。何よりも、武器合成や図鑑作成等、楽しめる要素がてんこ盛りであるにも関わらず、それらが決して押しつけられない「軽さ」が心地いい。「テイルズ オブ」シリーズ未経験者でも、なぜ本シリーズがこれほど支持されているのかが理解できる……そんな手本のような RPG だと思う。
『インフィニット アンディスカバリー™』は、「月が鎖で大地に縛りつけられている」という大胆な世界設定に、まず驚かされる。そのコンセプトやシナリオに、水野良氏や賀東招二氏といったファンタジー SFノベルの第一人者が関わっていると言えば、より興味を抱く人もいるだろう。ゲーム中は、すべてがリアルタイムに進行し、いつでも自由に視点操作が可能。そのため、移動時は、よりプレイヤー自身に近い目線で美しく広大な世界の探索を。戦闘時は、より主人公と一体化して剣を振るう、爽快なアクション戦闘を楽しむことができる。
ちなみに筆者は、広いマップを移動しているとき――ループする音楽を耳にしながら、何を考えるでもなく(でも確かに何かを思いながら)平原や森の中を歩いているときに、「ああ、RPG やってるなー」と、一種独特の感慨を抱く。その意味では本作、じつに歩きがいがあるという点も気に入っている。
『ラスト レムナント™』については、この原稿の執筆時点では未発売(未本格プレイ)のため、本サイト内の TGS レポートなどを参考にしていただければと思う。多少そちらを補足すると、本作には RPG の覇王たるスクウェア・エニックスの「攻め」の姿勢が、とくに強く現れていると思う。軍勢どうしのバトル然り、アンリアルエンジン 3 の採用然り――従来の日本の RPG の楽しさを踏まえながら、より新しく、深く遊び込めるような RPG を作っていこうという貪欲な気概が感じられるのである。陣形やユニットの編成など、一見シミュレーションっぽい要素も複数盛り込まれているが、実際にプレイしてみると、本作が純然たるRPGの流れの上にあることを理解できると思う。ともあれ、RPG ファンにとって見逃せない一作であることは確かである。
なお、11 月 19 日より開始された「New Xbox Experience」という大規模なシステムアップデート以降は、ディスクのゲームを HDD へ取り込むことで、ロード時間やその頻度が軽減されるようになった。『ブルードラゴン™』や『ロストオデッセイ™』など、過去に発売された Xbox 360 珠玉の RPG タイトルを、さらに快適な環境でプレイするチャンスであることも付記しておきたい。
秋の夜長に、あるいはこの年末年始に、まずは気になった1本、手を伸ばしてみてはいかがだろうか?
その際はぜひ、「できれば最後まで」……。