――NINETY-NINE NIGHTS™ (N3) の発売日である 4 月 20 日が間近に迫ってきましたが、今のお気持ちは?
水口 : どきどきしています (笑)。このプロジェクトは、サンユンさんやファンタグラムの皆さんをはじめ、多くの人たちが非常に頑張ってくださったので、プロデューサーとして本当に感謝の気持ちしかありません。うまくいけばいくほど思うことなのですが、チームが解散するのも寂しいし、「このままずっと続けばいいのに」という複雑な気持ちです。もちろん、製品版をプレイしてみて、ユーザーの皆さんに N3 のコンセプトや楽しさが伝わるものになったと感じましたので、安堵感もあります。
――この N3 プロジェクト誕生の経緯をお教えください 水口 : 今回、新しいハードでどんな新しいチャレンジをしようかと考えたときに、黒澤明監督の映画「羅生門」(1950年・日本) をゲームで体験させることができたら面白いのでは? という話が持ち上がりました。ある場所に集う人々がいて、それぞれの視点によって物語の印象が全く違ってくるというような。今ある映画のほとんどがワンサイドジャスティス。つまり、こちら側が善で、向こう側が悪、それで悪をやっつけて「よかったね」という勧善懲悪のパターンがすごく多い。でも、黒澤明監督は、50 年以上前に、その構造を根底から挑戦的に壊すような作品を作っていたんですよね。 もう少し突っ込んでお話しすると、たとえばアメリカでの 9.11 事件 以降たくさんの戦争や紛争が起こっています。それに対する各国の報道を見ているうちに気付いたのですが、戦争のフィールドひとつとっても、国やメディアの立場によって切り取り方が全く違う。起こっている "戦争" はひとつの事実でしかなくて、でもそこをどう切り取るかによって全然違う印象で見えてくるんです。 現在、僕らはインターネットを通して瞬時に様々な情報のリソースを得ることができます。いろいろな立場で表されたそれらを全部見たときに、果たして僕らは何を思うのか? ということを突きつけられているのが今という時代なのではないかと思います。そんな状況下にあって、僕らの考え方と、映画などのエンターテイメントのあり方に、距離が出てきているような気がするんです。でも、その一方で、ゲーム機は独自の進化を遂げ、Xbox 360 が登場して、映像や音の表現力が格段にアップし、ドラマもすごくよく描ける、どんな視点でも切り取れるという段階になりました。じゃあ、ゲーム上の世界に集う、「善」と「悪」と呼ばれているもの、味方のはずの人間同士でもいろいろな立場や守るべきものがあって、そこに愛があったり、葛藤があったり……そういうものを全部体験させることによって、「その世界でなにが起こっているのか」がだんだんわかっていくという構造にチャレンジしてみたいなと。そんな思いから、この N3 の構想が生まれました。 
ゆるぎなき正義とは
――登場人物の中で、水口さんが一番お気に入りのキャラクターは? 水口 : やっぱり僕もそれぞれに思い入れがあって難しいんですが、苦心したという意味では、僕の立場でいうと「ディングバット」ですね。彼が N3 のコンセプトを象徴しているし、ユーザーの皆さんも、ディングバットをプレイした瞬間に、N3 がどういうゲームなのかがわかると思います。この、コンセプトを実際に具体化していくプロセスがとても大変だったんです。それには映像の力を絶対に必要としたし、演技の力も必要だった。実は、シナリオを書いている段階から、もうこの役は古谷徹さん (声優・代表作は『機動戦士ガンダム』アムロ・レイ役など) にお願いしようと考えていました。15 歳の少年の葛藤、兄を失い人間を憎み、その中で戦士としての誇りも持って、非常に正義感に溢れていて……そういったことを総合すると、古谷さん以外に考えられなかったんです。 
ゴブリン族の戦士ディングバット
――ディングバット役を依頼した時点での、古谷さんの反応はいかがでしたか? 水口 :「なんでゴブリン? ヒーローじゃないの? って一瞬思った」と笑いながらおっしゃっていました (笑)。それでも「これはなにかある」と思ってくださったらしく、快諾していただけました。この作品にはいろいろな宝物がありますが、その中で古谷さんの演技も 1 つの大きな宝物だと思っています。アフレコの現場で、喉によくないので絶叫はさすがにちょっとお願いできないかなと思っていたのですが、叫んで欲しいような顔をしていたんでしょうね、僕が (笑)。「水口さん、やりますよ」と言ってくださって。「いや、無理しないでください」って僕が言っても、「ここまで来たんだからやりましょう」って、声がつぶれるのを覚悟で絶叫してくれたんです。だからこそ、その演技はこう胸にぐっとくるものがありますし、このゲームにすごく大きな潤いを与えてくれている感じがしますね。 今回、僕にとって、 "キャラクターに魂を入れる" ということが、とても大きな課題だったんです。そのほかのキャラクターも、たとえばインフィやアスファ、この 2 人に関しては、それぞれ那珂村タカコさん、小川輝晃さんという役者さんにモーションキャプチャーと声の両方を演じていただいています。モーションキャプチャーの収録現場で、声を出しながら、泣いたり叫んだり、それに表情まで、真剣演技を実際にやっていただきました。自分の演技に自分でアフレコするんですから、もう完璧! ですよね。今までは、マシンスペックの問題で、ゲームのキャラクターにそこまで魂を入れることはできませんでした。
――水口さんが考える、Xbox 360 の魅力とは? 水口 : まず 1 つはっきりしているのは、現存するゲーム機のなかで最も、格段に性能がいいマシンであるということ。ハイデフでゲームを楽しめる機械は、今、他に存在していませんから。これが何よりも魅力だと思っています。あとはやはり、オンラインのネットワークにつながっているというところ。今回、残念ながら N3 は Xbox Live 非対応ですが、僕自身としては、将来的に何かやってみたいという気持ちはあります。アイディアはいっぱいありますよ。Xbox Live については、非常に興味を持って見ています。
――最後に、メッセージをどうぞ! 水口 : N3 は、新しいチャレンジとは何かということをずっと考え続けて、それをカタチにできたゲームだと思います。僕が考えるいいゲームとは、間口が広くて奥が深いもの。それはサンユンさんとも最初に確認したところで、実際に出来上がってみて、それが実現できたと感じています。1 回プレイし終わったあとに、キャラクターの順番を変えたりして再び遊んでみて、それによって印象がどう変わるのかというところも、楽しんでもらいたいですね。ゲームってやっぱり体験のメディアなので、1人でも多くの人に実際に遊んでもらいたいです。必ず今までのゲームとちがう、何か新しい発見があるはずです。僕自身、ここから始まる新しいゲームの進化を考えていきたいと思っていますので、ぜひユーザーの皆さんの感想を聞かせていただいて、キャッチボールができたら嬉しいです。
ゲーム概要 ゲーム業界に様々な新機軸を打ち立ててきた水口哲也氏と、今、世界で注目を集める韓国屈指の開発会社ファンタグラム社のサンユン・リー氏が手を組み、世界に贈り出す最新作。この世の光と闇を統べる不思議な力を持った石が分かつとき、世界は恐怖の闇に支配され、そこに九十九日間の長き夜が訪れる。そして戦乱の世は、百日目の朝に光を取り戻す?。光と闇の葛藤が垣間見える壮大な物語と人間同士のドラマ、大軍勢を相手に戦う爽快なアクションがひとつになった、全く新しいゲーム体験を提供します。 ゲーム詳細情報はこちら |