
製品情報ロストオデッセイ™開発元: ミストウォーカー/フィールプラス/マイクロソフト 発売元: マイクロソフト株式会社 ![]() オフライン プレイヤー数 : 1 Dolby Digital (5.1 ch) カスタム サウンドトラック ハイビジョン D4 (720p) 公式携帯サイト![]() | ソフトレビュー No.2今年は "寝正月" じゃなくて "泣正月" はいかが? |
| "ハンナの旅立ち" |
では、"千年の夢" のうちの 1 つである、"ハンナの旅立ち" を紹介しよう。ある街道沿いの宿屋に、ハンナという少女がいた。彼女はとても美しかったが、生まれつき身体が弱く、医者に "成人するまでは生きられないでしょう" と伝えられていた。その身体のためどこへも出かけられない彼女は、宿屋を訪れる旅人から、色々な話を聞いた。彼女が知らない他の国、見たこともない風景……。彼女は熱心に旅の話に耳を傾け、続きを催促し、最後はため息をついてベッドへ戻るのだ。カイムも、彼女へそんな土産話を語る 1 人であった。
ある時、カイムが久方ぶりに宿屋を訪れると、ハンナの容態は非常に悪化していた。もうハンナは、カイムの顔さえもわからないであろう。カイムは急いで彼女の元へ足を運んだ。
旅の途中では、多くの楽しいこと、辛いことに出会ってきた。だが思い返してみれば、ハンナに話すのは、楽しいことだけであった。いや、ハンナを通じて、カイムは自分自身に楽しいことを言い聞かせてきたのかもしれない。
ハンナへ伝える最後の話は、ハンナがこれから出かける旅についてだ。死出の旅は、決して哀しいことではなく、ベッドの外の世界へ出られる喜びであることを。そして、カイムは「また会おう」と言葉を閉める。死後の世界で再び会うことをハンナと約束したのだ。
だが、カイムは不死者である。いくら願っても死ぬことができず、ハンナとは 2 度と出会えない。そう、この約束は、ハンナへつく最後の嘘である……。
筆者はこの物語を最後まで読んだとき、心にズシンと響くものを感じた。カイムが不死者であるからこそ、人と別れる悲しさに加え、死ねない悲しみが終始つきまとってくるのだ。筆者のつたない文章ではあるが、重松清氏の物語の魅力が伝われば幸いである。 "千年の夢" の内容は、このようにどれも涙なくしては読めないストーリーだ。それも、ダイナミックな話ではなく、ある靴屋の一生であったり、ある臆病者の将軍の話であったりと、庶民的な内容が多い。その分、長き時間を生きてきたカイムに感情移入しやすくなる。また、各話を読んだ後、今までの景色が違って見えるのは、筆者だけであろうか。この “ハンナの旅立ち” は、ある宿屋に泊まったときにカイムが思い出す。ゲーム中では明言されていないが、きっと遙か昔にハンナが居た宿屋なのだろう。過去の記憶に思いを馳せると、つい目頭が熱くなってしまう。
こんな体験をしてしまうと、この宿屋はおろか、他の何気ない場所でもアレコレ想像してしまう。"千年の夢" では語られていないだけで、きっとカイムはもっとたくさんの悲しき記憶を背負っているはずだ。カイムの悲しい過去を知ると、本編のストーリーにより深みを感じるようになる。
ちなみに本作の公式サイトでは、制作総指揮の坂口氏もこの “ハンナの旅立ち” について語っている。ああ、やっぱり制作者であっても、ジーンときてしまうんだろうなあ。その気持ちはすっごくよくわかる。
なお、この物語は全部で 31 話用意されているようだ。基本的には順番に読めるようになっているが、どれも 1 話ずつ完結しているため、飛ばしてもゲーム進行に支障はない。でも、読まずにゲームを進めるのはもったいないので、読んでないストーリーがあったら、1 度元のエリアに戻ってでも、過去の記憶を取り戻してほしい。
取得した "千年の夢" をもう 1 度読みたいと思うのはファン心理。でも安心あれ! ロストオデッセイ では、1 度取得した物語はゲーム起動時にメニューから選んで読むことができる。また、ゲーム中では、街の宿屋に泊まったときに再生できる。これは、カイムが寝ている間に見る夢といった、なかなかニクい演出だ。
| 本作に登場する 4 名の不死者たち |
1000 年を生き続ける不死者はカイムだけではない。ロストオデッセイ には、カイムの他に 3 名の不死者が登場する。かつて伝説の女海賊と呼ばれていたセス、平和主義を唱える海洋国家ヌマラの女王ミン。そして、ある事件がきっかけで心を閉ざしてしまったサラの 3 人だ。彼らの過去もゲーム中に少しずつ明らかになっていくが、ネタバレにつながってしまうので、ここでは「彼らの過去も悲しみに満ち溢れている」とだけ言っておこう。期待しながら遊んでほしい。
去年は明るく元気な登場人物が活躍する RPG ブルードラゴン を発売した坂口博信氏だが、今年の ロストオデッセイ はまさに真逆に位置する大人のための RPG だ。年末年始はモニターの前にジッと落ち着いて、泣ける RPGを 真剣に遊んでみてください。2008 年の初泣きは、ぜひ ロストオデッセイ で!!
【Writing】
車 ポン吉
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