セリン オスマン提督、海軍情報局、UNSC | 実証
進行中の調査 - 第3班のアクセスのみ | アクセス記録 使用不可



注意-これらの報告書や調査書の内容は、ONI 司令部の許可を得た第3班のみが閲覧できる。情報漏洩や軍事行動の完全性の損失を疑う場合は、すぐに班長へ報告し、バックバーン プロトコルを実行する。



分裂 NEW

このような結末しかなかったのだろうか?他にも道はあったはず。だが起こったことが事実となる…続きを見る


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エピソードS2.PRE. FERO の物語

[デジタルログを文字化する] この任務に就いた時は、こんなところで、こんなふうに話をするなんて想像もしなかった。ベンジャミン ジラウド、ぺトラ、彼らは… マイクに向かって話すのが好きなの。それが彼らの持つ特別な力。私? 私は… こんなこと今まで見たことがなかった。私には強い思いがあった。自分や友人たちが幸せに暮らす明るい未来への希望… でもそれはすべて崩され、歪曲された… 自分自身のことが分からなくなるまで。あなたは… そんなこと気にもしないでしょ?そうよ、あなたはただ私たちがどうやってここに来たか知りたいだけ。ベンの話は知っているでしょ。ジャーナリストが ONI をスケープゴートにした。私が知っている話は違う。あなたが期待していたものじゃないかもしれないけど、これが私の、FERO の物語。


中断

『処理』とは実に綺麗にまとまった言葉だと思う。ODST らしい言い方だ。だが現実はもっと泥臭い。意識が朦朧するまで、首を絞められる様な事を指す。『処理』と言えるほど綺麗な光景ではない。


エピソードS2.00 回収するべき1つのもの

[デジタルログを文字化する]
FERO : それが奴らのしていること。自分たちの残虐行為を手の込んだやり方で隠蔽する。組織的な嘘によって真実をなかったことにする。
ODST GREY : FEROを確認した。
FERO : 私たちは占領された宇宙にいるすべての男と女、子供の注目を集めた。さらに内周植民地の穏健派たちさえも動き出そうとしていた。だが UEG はネットワークを駆使して子守唄を聴かせ、大衆を眠りにつかせて真実を語る者を弾圧している。それが、奴らがベンジャミン ジラウドにしたことだ。

NOAH : 人数は全部で何人いる?
TULLY : 130から140人。それと重要人物が6人
WILEY : 戦場に集まる反乱軍にしか見えないが
GREY : 防衛線を確保しました
NOAH : 了解。待機しろ
FERO : 外周植民地に火をつけたのはベンだったと、奴らは大衆に言い聞かせていた。だが私たちは何十年も炎を燃やし続けている。それはジャーナリストが「不正」を叫んだからではない、子供たちが苦しみで泣き叫んでいたからだ。私たちは資源を提供し、彼らの旗に敬礼した。だが私たちが助けを求めても、誰も来てはくれなかった。
TULLY : 3時方向を確認しろ、ワイリー
WILEY : 了解
FERO : 都市で暴動が起こっていた時、UEG は機甲部隊に連絡し、私たちの住処を跡形もなく消し去った。私たちの家族がコヴナントの戦艦に溶かされていた時も、政府であるはずの UEG は惑星が滅びるのを何もせずに見ていた。そして今、私たちの苦悩はベンが作り出した嘘だったと奴らは主張している、私はベンに作り出された人間か?
INSURRECTIONIST CROWD : 違う!
FERO : 私は作られた存在ではない。植民地で生まれ、もがき苦しんだ。コヴナントの攻撃によって灰とガラスだけになった星で築かれた事実だ。私たちは生き残った。どれだけ多くの嘘を積み重ねても、奴らが起こした炎と、私たちの目指す理想が消えることはない。
WILEY : くそ…、むさ苦しい反乱軍どもめ
NOAH : 無駄話はやめろ
WILEY : いつからONI が部隊長になったんだ? なあ、みんな?
TULLY : いい加減にしろ、ワイリー
WILEY : 分かりました
INSURRECTIONIST CROWD : ジラウドを解放しろ!ジラウドを解放しろ!
FERO : そのとおりだ。ベンにはそれ相応の恩赦が与えられるが、まだ私たちにはそれだけの権限がない。UEG にメッセージを送る必要がある。私たちの意志を示すための…
MUTINEER 1 : 熱核兵器を落として帝国主義者のはらわたを焼き尽くせ!それが送るべきメッセージだ!
MUTINEER 2 : 炎から血へ!
MUTINEER 1 : 炎から血へ!
FERO : UNSC の人事センターや連邦の通信施設を攻撃しても、ベンジャミン ジラウドを解放することにはならない。私たちは何十年も「炎から血へ」と叫んできた。その間、ずっと血を流し続けている。武力戦争、それこそが奴らの求めているものだ。奴らが勝利できると思っていることだ。
GREY : 精製所で動きがありました
TULLY : 建物は範囲の外だ。目標から目を離すな FERO:私たちが復讐を企む度に、奴らは強くなる。炎の中に身を投げ入れることが革命なのか?違う。これは理想を求める戦いでなくてはならない。力によって囲い込むのではなく、経済の繁栄によって力を拡大し、UEG が交渉せざるを得ない勢力を築く。その戦争なら、私たちは勝利することができる。
MUTINEER 1 : もう何週間もここに座っているだけだ!今こそ行動に移す時だ!
FERO : いいえ、やみくもに子供たちを危険にさらすのではなく…
MUTINEER 2 : 俺はFLP と共に2511年のマモレにいた。
GREY : マモレ?
MUTINEER 2 : お前はその時、どこにいた?
GREY : 奴らは全員捕まったと思っていたが
MUTINEER 2 : まだ生まれてもいなかっただろ
WILEY : どうせハッタリだ
MUTINEER 2 : 自由のために戦った本物の闘士たちを目の前に、セキボのように甘ったれたことを言うのか?お前がやっていることは自殺行為にしか見えない。
BOSTWICK : 下がって
MUTINEER 2 : 口のきき方に気をつけろ、小娘。大人が喋っている
BOSTWICK : 下がれと言った
FERO : ボストウィック、平気よ
WILEY : 旧世代の反乱分子が標的に近づいていく。危険な感じだ
TULLY : アルファチーム、側面に注意しろ
GREY : 了解
NOAH : よし、始めるぞ。行け
TULLY : 回収作戦開始まで3…2…1…

TULLY : 行け!ゴーゴーゴー!

BOSTWICK : 奇襲だ!下がって!

BOSTWICK : FERO が捕まった!
GREY : 目標を確保。
TULLY : よし。ガンシップに戻れ!
TULLY : いいぞ、出発しろ!

FERO : なんで… 放せ!
WILEY : おっと!何なんだ?
FERO : 誰の命令だ?ん?誰が許可した?
WILEY : おい!落ち着けって、FERO… くそっ!
FERO : おい!私は上官だぞ、ランス伍長。お前にFEROと呼ばれる覚えはない、サンカー司令官と呼べ、分かったか?低能なクロマニョン人のお前たちは民間人に銃火器を使用した。誰が許可した?
WILEY : 待て、あそこに民間人はいなかった。いたのは反乱軍のネズミどもだ
FERO : お前の部隊長はどこだ?今の言葉を後悔させてやる、絶対にな
WILEY : ふん、やってみな
FERO : ポッドなしで落としてやろうか、兵隊さん?そのジャケットに戦死者と書いて。
WILEY : ほう、次は海兵隊を殺すのか?
FERO : 心配するな、この高さからなら落ちても死なない。反乱軍のネズミがお前を切り刻んで、1週間ごとに母親のところへ肉片を送り届けてくれる!
NOAH : マヤ…
WILEY : 最悪だな、反乱軍の腐った思考が脳みそに染み込んでやがる
FERO : 私を怒らせるなよ
NOAH : マヤ!
FERO : ノア?さっきのは何だ?お前が許可したのか?どうして…
NOAH : マヤ!こっちに着いたらすべて説明する。大丈夫か?
FERO : ああ… いや、大丈夫じゃない、ノア。大丈夫なわけないだろ。あそこにいた人間の半分は民間人だった。そこにネアンデルタール人並みの知能しかない連中を突っ込ませるなんて…

FERO : 待て、まだ地上には他の部隊がいるのか?
NOAH : ああ。第2部隊が…
FERO : 今すぐ呼び戻せ
NOAH : それはできない。まだ作戦行動中だ。ブラボーチームは後始末をしている。
FERO : あれは後始末じゃない、大虐殺だ。銃を撃ちたくてたまらない野蛮人どもが民間人を殺してる。残りの部隊を呼び戻せ。今すぐに
NOAH : 断る!回収を命じられたのは君だけだ。
FERO : 何のために回収する?一体どうなってる?何度も潜入がバレる危険を冒したのに、お前や司令部からはほとんど連絡が来なかった。ジラウドのことを包み隠してからはな。私は…
NOAH : 分かっている、すまなかった。3週間前、司令部から連絡を行わないよう厳しく言われた。どうしようもなかったんだ。
FERO : 1ヶ月近く何も分からない状態だったのに、突然お前の作戦行動に巻き込まれて、さらにわけが分からない。頼むから、何が起きているのか教えてくれ
NOAH : 回収を命じられたんだ。上層部からの命令で、大急ぎで進められた。
FERO : そもそも司令部は何をしている?ジラウドの作戦を実行した時は、地域をより安定させることが目的だった。それについては司令部がとっくに解決したと思っていたのに。
NOAH : 解決している FERO : それをぺトラ ジャネセクに伝えて。彼女の最後のメッセージを聞いた人々はまだ怒っていて…

NOAH : 聞いてないのか?回収部隊が宇宙の外れの輸送貨物船に隠れていた彼女を回収した。

PETRA : なに… なんで… 一体どうなってるの… 待って、諦めないで、彼らの反応を見失わないように…

FERO : そんな… どういうこと?
NOAH : ONI の内部で、いろいろなことが変わっている。君がしたこと…ベンのアパートで諜報員を殺したことは…
FERO : 信じられない
NOAH : そうだな、聞いてくれ
FERO : 第3班が仲間の諜報員を殺すよう私に命令して、それを私のせいにしようとしているの?
NOAH : それは公式な作戦じゃない。ただの政治的活動だ。誰かが他の司令官たちの欲求を満たそうとしている。
FERO : 私は彼らのことを調べた。2人の諜報員のことを。
NOAH : なぜそんなことを?
FERO : 若い男の諜報員には3歳になる娘がいた…そのことは知ってた?
NOAH : マヤ…
FERO : 彼は27歳だった。もう1人の諜報員はアカデミーの1年後輩だった。私はその2人を殺したのよ… 一体なんのために?
NOAH :マヤ… できることなら君の苦しみを和らげてあげたい。俺は… 君に連絡することができなくても、やれることはやろうとした。聞きたいことがある。
FERO : 聞きたいこと?
NOAH : ムシャク モラディのことだ。あの作戦中に君の武器が使われた形跡はなかった。殺害は記録されていない。彼は…
FERO : 形跡がないのは当然よ、私は武器を使わなかった
NOAH : どういう意味だ?
FERO : 血みどろの詳細は聞かないほうがいい
NOAH : 君には他に選択肢がなかった、マヤ
FERO : 分かってる
NOAH : 彼は潜入をバラそうとしていた。あのままにしていたら…
FERO : 分かってる。彼らは私の言葉に耳を傾けてくれる。私を… FEROを信じている。彼らは今よりまともな暮らしがしたいだけ。ただどうやってそれを手に入れるかを、誰からも教えられなかった。 NOAH : それは分かっている。君がどんなことを成し遂げられるかは誰にも予測できなかった、だが実際のところは…
FERO : 私の活動目的の範囲外でしょ、分かってる
NOAH : そうだ
FERO : はあ… まあ、あの冗談みたいな回収作戦のあとじゃ、私の潜入を隠すのに莫大な時間がかかるわね。できるだけ早く作戦後の違法行為に対して罰を課さないと…
GREY : 失礼します。敵負傷者を報告です
NOAH : 報告しろ
GREY : 2人の重要人物を含む26人の反乱分子が死亡、41人が生存可能な負傷
FERO : 急いで戻らないと、ノア
NOAH: 戻ることになるさ、マヤ。だが今じゃない。このままミッドナイトの施設に行くんだ 人的損失についてONIが理解していないことがある。個人としての人間は、そのことを理解しているかもしれない。でも人間を1つの集合体として図表上の数字で見るなら理解はできない。可能性としては… より大きな均衡の中のただの要因で… 何が起きているかといえば実は大局を失っていて… 彼らは…こういった複雑なアルゴリズムを実行して、人間の命の価値の費用対効果をはかりにかけている。私はあのリストに載っている67人の負傷者を全員知っていた。ONI にとっては67人のただの暴徒だったかもしれないが、私は彼らがどんな声をしているのか知っていた。あの日の夜、彼らの半分があそこにいた理由も、彼らが求めているものも知っていた。何年も行動をともにし、忠誠を誓ってくれた7人も死んだ。あの作戦で、それまでの人生で最も親しくなった親友2人を失った。私は彼らを守ると誓っていたのに… あの喪失をどう処理したらいいか分からなかった。でも私が怖かったのは、FERO として5年の月日を過ごしたことで、それらのことについてマヤはどのように考えるべきだったかが分からなかったということ。 


ガラスの中

哀れなベンジャミンはまだ真実を探そうとしている。彼には少し希望を抱いたこともあったが、それもお終いのようだ。あの血で汚れたガラスの向こうで彼は一体何と戦っているのだろうか。


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エピソードS2.01 CUBE B-349

行方不明だった男が突如夜中に現れ、各コロニーで『異変』が目撃されるようになる。そしてマヤに新しい任務が与えらえる。

[デジタルログを文字化する]
潜入に関して言えば、私が諜報員だということは作戦に関わっている者以外、誰も知ることは許されなかった。だからこそ彼らは私を小惑星帯の陰にあるONI の秘密施設ミッドナイト・ファシリティに連れて行った。政府に敵対する者たちが名前を聞くだけで震え上がる刑務所は宇宙のいたるところにある。この施設は、そのような刑務所の1つではなかった。ミッドナイトは犯罪者を更生するための施設ではなく、彼らの存在を消すためにものだった。

施設へ向かう途中、私は死傷者のリストを検証するよう3回頼んだ。地上から送られたビデオ画像を何度も再生し、虐殺の光景を目に焼き付け、自分が演じた役割を受け入れようとした。 幸いなことに全員が殺されたわけではなかった。反乱軍内での私の友人であり右腕でもあるボストウィックも仲間と共に逃げ延びていた。
その事実は私に希望を与えてくれた。でも友人や仲間が殺される映像を繰り返し見ながら、心地よさを感じることはできなかった。

TULLY : 司令官、間もなく到着します
MAYA : ありがとう

窓の外に見えるのは、巨大な小惑星だけだった。にわかには信じがたいが、その中にはコヴナントの艦隊を葬り去る火力を有する秘密の牢獄があった。岩の底面に隠された入口へ入ると、この施設の途方もない大きさが明らかになった。パルスビーコンが私たちを暗いトンネルへと導いた。永遠にも感じる長い時間が過ぎ、格納庫に到着した。

ELBA (AI) : 安全を確認。ようこそミッドナイト・ファシリティへ

ドアが開くと、私はすぐに船から飛び出た。ODSTの1人がブーツについた血を嬉しそうに拭き取っているのを見て、ここから離れたかった。気が付くと巨大な格納庫の中に立っていた。高さ100メートルの壁に囲まれた空間は、2つの小さなドアに向かって伸びる誘導灯以外は何もなかった。人の気配が感じられない場所だった。

TULLY : みなさん、この作戦のことは完全に記憶から消し去ってください
GREY : 了解です
WILEY : よう、FERO。感謝しろよ
MAYA : 何に?
WILEY : お前を助けてやったことにだ

彼を殴ったことは記憶にない。
(マヤがワイリーを殴る)

WILEY : うっ!
MAYA : この野郎…
GREY : おいおい、やめろ!
(ワイリーがマヤを攻撃しようとするが、他のODSTが止めに入る)
WILEY : くそっ、後悔させてやるぞ!
MAYA : お前に何が分かる!あそこには…
WILEY : あのまま置き去りにしてネズミどもと一緒に死ねばよかったんだ、この…
TULLY : お前!止めろ!すぐに止めるんだ!

だが私は彼を思いきりぶちのめした。

WILEY : …分かりました
ELBA (AI) : こんにちは、サンカー司令官。ミッドナイトへようこそ。ライバク大尉が18階でお待ちです。エレベーターを使って…
MAYA : まずはキューブに行きたい
ELBA (AI) : 司令官、あなたをライバク大尉のところへ直接報告に行かせるよう命令されています

私は寄り道をすると決めていた。会わなければならない人物がいた。AIは驚いていたようだったが、私は許可を得ていた。

ELBA (AI) : 分かりました。あなたの目的地に向かうウェイポイントへ進んでください

脈動する青い光が導く先には、同じ形をした窓のない立方体が並ぶ、果てしなく続く通路があった。かすかに聞こえる光の発生音の他には何も聞こえなかった。私はキューブB-349の前で止まった。

ELBA (AI) : 彼の状態は良好ではありません、司令官
MAYA : 見せてみろ

不透明だったガラスが、こちら側からだけ見えるようになった。キューブの中、粗雑な寝台と小さなトイレの間に彼はいた。床の上に足を交差して座り、小さな軟らかいペンで本物の紙に何かを書いている。彼はじっと考え込み、書いた言葉を口にしていた。地球で最も憎まれる人間。外周植民地に住む大勢の者に愛される反抗運動のシンボル。無実の罪で裏切り者にされた勇敢なジャーナリスト。そこにいたのは…ベンジャミン ジラウドだった。少なくとも、そう知られていた者だった。私は彼を解放すると仲間たちに約束した。でもそのつもりはなかった。彼を解放する人間など、どこにもいない。ONIは自分たちの帝国の外れにベンを送り、彼はその場所に留まっていた。彼を直視することができなかった。理由の1つとして、不思議なことに私は彼を友人だと考えていた。でも最大の理由は、彼をあそこに追いやった原因は私にあったからだ。だが許しを求めているわけではなかった。私は代償を支払わなければと感じていた…ベンにズタズタに引き裂かれていたらと願っていた。

MAYA : 向こうからも見えるようにして
BEN : すまない…申し訳ない。今は詳細について語り合うことはできない、カウンセラー。まだ編集しているんだ。だから…
MAYA : ベン

私は彼の頭が振り向くところすら見ていなかったが、彼は突然私を見つめた。その目はとても鋭く、まっすぐ私の目を見ていた。それは私の知っていたベンではなかった。まったくの別人だった。私は捕らわれた囚人のように、無防備に感じていた。彼がゆっくり立ち上がると、私は凍りついた。すでに私はミッドナイトではなく、ベンの世界の中にいた。私は侵入者だった。彼はガラスに向かってまっすぐ歩き、立ち止まった。私はベンにした行いに向き合いたかった、言葉で私を骨抜きにする機会を与えたかった。でもその時、彼は私の目の前にいた。私は2人の間にあるガラスが恐ろしいほど薄く感じていた。

BEN : あっ、君は!
MAYA : ベン。そうよ…私は…
BEN : やっぱり
Maya : いい、話を聞いて、ベン。私が伝えたかったのは…
(ベンがガラスに手を叩きつける)
BEN : 生きていたのか!
MAYA : 私は…
BEN : す、すまない。君は生きている!信じられない!
MAYA : 私は…えっと…
BEN : 特攻任務で命を落としたりする人間じゃないと思っていた!何度も自分に言い聞かせていた。すべてを台無しにしたあとでさえも “FEROは別の道を見つけた”と、ずっと言い続けていた

彼は事実を知らなかった。私に会えたことを喜んでいた。私は…信じることができなかった。ベンは今もFEROのことを信じているかもしれないという可能性を捨てずにいた罪悪感で、自分を罰するのに忙しかったんだと思う。何て声をかければいいか分からなかった。

BEN : いや…待て…君がここにいるはずがない。この場所が何か知っているのか、FERO?出て行くんだ!今すぐ離れるんだ!あれが…AIがすべて監視しているんだ。彼らはすでに君のことを探していて…
MAYA : ここに長居するつもりはないわ。心配しないで、私はただ…
BEN : そう、そうだ。もちろん君は自分が何をしているかちゃんと分かっている。私は考えていなかった、私はただ… ああ、よかった、会えてうれしいよ。大丈夫か?
MAYA : 私は…ええ…大丈夫よ。あなたは?
BEN : 私は元気だ。とっても。ずっと書いていた、忙しくしていたよ、それで…
MAYA : 寝台についているのは血?
BEN : え?ああ、そうだ
MAYA : 何が起きたの?看守にやられたの?ここで奴らに暴力を受けているの?
BEN : いやいや、違うよ。そんなんじゃないんだ。すべて私が悪かったんだ、そうなんだ。私は…こんな状況になるとは思っていなかった。独房監禁については本で読んだことがあったけど、現実は違うんだ…明らかに。それで…それから何回か不運な目に遭って、感情をコントロールできなくなってしまったんだ。それはよくある心理的反応で…でも違う、そうじゃない。それは私のせいで…今は予防対策があるんだ。私の神経が高ぶりすぎた時は、音楽をかけて落ち着かせてくれる。正気を失いそうになったら、彼らはガスを使って、私はただ眠りにつくんだ、だから…大丈夫なんだ
MAYA : ベン…
BEN : 本当に大丈夫だ、そうは見えないかもしれないけど。君は正しい。でもそれは昔のことだ。ほら、見て、見える?私の手は完全に治った。大丈夫なんだ!いや…待て、待って…違う違う違う違う違う違う…
MAYA : どうしたの?
BEN : 待って。君のコンピューターパッドを見せて
MAYA : ベン、私は…
BEN : 違う、違う。ほら、ほら。過去に戻るのはやめよう。とにかく…お願いだ。君のコンピューターパッドを見せて。時間が見たいんだ
FERO : 分かった
(マヤが自分のコンピューターパッドをガラスに向ける)
BEN : よし…7時43分。分かった。下ろして。よし、もう一度見せて。何も言わず、ただ見せて
(マヤがもう一度、自分のコンピューターパッドをガラスに向ける)
BEN : 7時43分…ありがとう、どうもありがとう。よし、これは現実だ、現実なんだ。分かった。よし…いいぞ。すまない、これは…この行動は…夢じゃないことを確かめるためにやるんだ。時間の断絶は典型的な嘘だから…でも時間は変わらなかった、だからこれは夢じゃないんだ
MAYA : そう…
BEN : ああ…そう、分かっている。それは…分かっているんだ。おかしいと思うかもしれないが、時計を持っていないんだ。あれは頭に干渉する。最初は、独房の外にいたとしたら、夢だと分かっていたんだ、なぜなら彼らは私を現実世界へ行かせてくれない。でもそれから、私の夢は独房の中にもあって、それで…混乱した。何が現実で、何が現実でないか分からなかった

“何が現実で、何が現実でないか分からなかった” それがベンの物語だった。彼は政府が闇に葬った残虐行為に光を当てるため、何十年にも及ぶ不正な隠蔽に立ち向かった。民衆は真実を知る権利に値すると信じていたから。そして今、ミッドナイトの穴に葬られた彼は、最も基本的な人間の真実を求めて戦うことを余儀なくされている。ベンは何が現実なのかを知ることさえできなかった。
BEN : FERO…
MAYA : なに?
BEN : みんな、私が悪者だと知っているんだろ?
MAYA : 外周植民地の人たちは今も応援している。彼らはあなたの解放と正義を望み、あなたのことを…
BEN : いや…ダメだ、ダメだ、ダメだ!そんなことは望んでいない!
MAYA : どうして!?
BEN : 違う!私は助けたいんだ。もし人々がこのことを聞いていたら… こっちに来て、聞いてくれ。私が書いていたことを君に読み聞かせたい。それは…
MAYA : ベン…
BEN : これが私のやり方だ…すべてを正すための。まだ下書きだけど、これは…平和のメッセージと謝罪の言葉だ。最後になるけど、君には個人的に感謝している
MAYA : やめて、ベン…
BEN : いや、大丈夫、心配はいらない。君の名前を挙げたりはしない。FERO、君は私の命を救ってくれた。私のアパートでのことだけじゃない。それは…君が…
MAYA : やめて!私はあなたの命を救ってなんかいない。罪のない人間を2人も殺した
BEN : いや、そんなはずはない…私を守ろうとしていただけだ。他に選択肢がなかったんだ!彼らの死の責任が誰かにあるとしたら、それは私だ。私が君をその立場に追いやった。私が彼らをその立場に追いやった
MAYA : ベン、彼らはあなたを殺す気なんてなかった。彼らはただ…
(拡声装置が音を立てる)
SULLY (Over Coms) : マイケル サリバン司令官だ
(ベンが息を飲む)
SULLY (Over Coms) : 君の行動は連邦刑務所の規則に反している
BEN : 走れ。ここを出るんだ、FERO。今すぐに!
MAYA : 私は…
BEN : 行ってくれ!早く!行け!
MAYA : 私は…
SULLY (Over Coms) : ガラスから離れ、すぐに私のオフィスへ報告しに来い
BEN : 彼は何を言っているんだ?
SUILLY (Over Coms) : これは最終警告だ
BEN : 何を言っているんだ?何が…起きているんだ?
SULLY (Over Coms) : これ以上、私の囚人と話すことは許可しない、サンカー諜報員
BEN : サンカー諜報員?一体…
MAYA : ごめんなさい、ベン…
(ベンのキューブにクラシック音楽が流れ始める)
BEN : どういうことだ…どうなってる…そんな…あり得ない… 時間を見せて、時間を見せてくれ。コンピューターパッドで時間を見せてくれ…
MAYA : ベン、私はただ…
SULLY (Over Coms) : 下がるんだ、司令官
BEN : うわあああ… 違う違う違う!
MAYA : ごめんなさい
BEN : でも君は…君は…私の友達だ…どうして?まさか君は…ONIのスパイなのか?
MAYA : ベン、ごめんなさい。私は…
(ベンがガラスを叩く)
BEN : よくも騙したな!
SULLY (Over Coms) : 落ち着け、ベン
(ベンがガラスを叩く、何度も何度も)
MAYA : やめて!お願い!ベン、ごめんなさい。私が悪いの、私はただ…
BEN : 毎日だ!毎日、この独房の中で、お前の心配をしている!FEROのことを心配している!
(ベンが濡れた手をガラスに押し当て、自分の血を塗りつける)
BEN : それなのに、お前は本物ですらない!
MAYA : ごめんなさい
BEN : お前は誰だ!?
SULLY (Over Coms) : ベン、冷静になれないのなら遮断しなければならない
(ベンは拳をガラスに叩きつけ、自分の言葉をさえぎる)
BEN : 言え。お前は、誰だ
MAYA : やめて!
BEN : お前は誰だ!お前は誰だ!お前は…
ELBA (AI) : 鎮静剤を投与
MAYA : ダメ!やめて!
(ベンの独房にガスが放たれる)
BEN : お前は誰だぁぁぁ!
MAYA : ベン…
SULLY : ガラスを見えなくしろ
MAYA : やめて!お願い!
BEN : お前は誰なのか…
(ガラスが不透明になり、互いの声と視界が遮られる)
MAYA : そんな…ベン!?

そして沈黙が訪れる。私はサリバンのオフィスに急いで向かった。
(マヤがサリバンのオフィスに飛び込む)

MAYA : 気は確かなの?
SULLY : マヤ!座ってくれ
MAYA : 立ったままでいい
SULLY : 座れと要求している
MAYA : 断ったらどうする?私にもガスを浴びせる?
SULLY : 鎮静剤の使用はベンが自分を傷つける時に講じる最終的な解決策だ。私がここに来る以前の彼は、壁を殴り、何週間も人と接触していなかった。チック症を発症し、毎日1日中、頭をかきむしっていたせいで頭皮を半分近くも失った。だが私がやり方を変え、彼に医療措置を施し、正気を取り戻させた。時間を潰すための道具さえ与えた、するとどうなったか分かるか?彼は自傷行為をやめ、ガスを使う必要もなかった。今日ここに君が現れて、許可なく囚人に会いに行き、我々が苦労して積み重ねてきた努力を台無しにするまでは…
MAYA : ふざけないで、サリー。なぜここにいるの?
SULLY : 我々はベンを広報活動に利用する準備をしている。“ジラウドを解放せよ”と叫ぶ群衆のためのビデオメッセージで
MAYA : 彼を操り人形にして、あなたのくだらない偉業の1つとして見せびらかすつもりね
SULLY : “見せびらかす”というのが“民衆の不安を解決する”という意味なら答えはイエスだ
MAYA : 信じられない…
SULLY : 彼はそうしたいと望んでいる。君も聞いただろ
MAYA : 問題はそこじゃない。あなたは出血していた彼に圧力をかけ続けている。それにあなたのくだらない偉業じゃ、彼の支持者を動かすことはできない。彼らはただ…
SULLY : 聞いてくれ、君の意見は尊重している、それは本当だ。だがこのケースにおける評価を下すとなった時、組織で一番優秀な分析者は、君と情報交換をする必要はないと感じていた。だが私は、肥溜めに5年間もいた者の意見はとても貴重だと思っている。この件については先へ進み、指揮系統に従うつもりだ
MAYA : それが問題なの。あなたは今もボストンにあるガラスの塔の中にいる。地上で実際に何が起きているのかが分かっていない
SULLY : いいか、私はFEROの言葉を聞いていた。君は派閥を戦争から遠ざけようとしている。それは素晴らしいことだが、君の抱き合わせた連立組織が自発的に反乱を終わらせることができない限り、我々はいくつかの心と精神を破壊しなければならない
MAYA : ベンのような罪のない人を拷問して?それが答えなの?
SULLY : ベンは我々を中傷しようとした時に、無実を主張する権利を放棄した
MAYA : それなら、私たちは中傷されるべきなのかも
SULLY : 本物の裏切り者のようなセリフだな
MAYA : 黙ってて、サリー。あなたはベンの権利を永遠に奪って…
(サリバンが拳をデスクに叩きつける)
SULLY : 違う!私は警告しようとした。引き下がるためのあらゆる機会を与えた。だが彼は聞かなかった…
MAYA : “ガラス化された星には不都合な記録がある”簡単なことよ、サリー
SULLY : 君は陰の中で自由裁量を得ているかもしれないが、“ガラスの塔”の中にいる者にとっては簡単なことではない。24時間監視される立場になれば、自分たちの雇用主に対して“抵抗”することは間違いだと思うようになる。我々の秘密を、ただ彼に話すことはできなかった。それならどうする?好ましい変化を待つ?心を開いて話し合う?違う。民衆は本物の恐怖には耐えられない。避難船に乗り込むために互いを引き裂きあう人々を見たことがあるか?
MAYA : ある、実際に間近で見たわ。あなたはどうなの?
SULLY : 暴走が起きたあと、どのようにして宇宙船基地を抹消したかは教えることはできない。だが…私は君がアクセスできないすべてのデータを見ることができる。そのデータを理解できるなら、君の逸話が万物の理論になることを避けられるかもしれない。ベンの物語が活動を1ヵ月間止めることができたなら、すべて崩壊していた

認めたくはなかったが、サリーは正しかった。恐怖こそが本物の怪物。コヴナントに殺された人間と同じ数の命が恐怖によって失われた。だがベンは偶然、隠された犠牲者たちが眠るONIの静粛な墓地に足を踏み入れていた。真実で民衆を怖がらせることが答えではなかった。もしあなたがベンジャミン ジラウドだとしたら、もしあなたが民衆だとしたら、他にどんな武器があるというの?

SULLY : 私のことはいい。ミッドナイトにいるべき人間だからだ。だが君は違う。准将に連絡をする時、君が連邦刑務所に生存する最も重要な囚人の1人と情報を共有していることを、どのように説明すればいい?説明できないだろ?いいか、私の囚人に近づかないでくれ。これは警告だ
MAYA : あなたは私に近づかないで。これは脅しよ
SULLY : マヤ、私は夜になれば眠る。君はどうだ?眠れるのか?
MIDNIGHT AGENT : サリバン司令官
SULLY : 伍長
MIDNIGHT AGENT : サンカー司令官、ライバク大尉がお待ちです
SULLY : 幸運を祈るよ、マヤ。心配はいらない、このことは一回りして君に返ってくるだろう。絶対に
私の血は煮えたぎっていた。この結果にどのように対処できるか分からなかった、だがそれはこれから起こることとは関係なかった。
NOAH : マヤ!

ノア・ライバクは私がONIで出会った最初の人物の1人だった。私の基礎を築いてくれた指導者の1人で、いつも面倒を見てくれた。

MAYA : タフな1日だったわ、これを終わらせたらミッドナイトを離れて潜入活動に復帰する
NOAH : 君はジラウドの作戦のことで、ここに呼ばれたわけじゃない
MAYA : 何ですって?ノア、じゃなぜ私はここにいるの?
NOAH : 頼む!マヤ、座ってくれ。我々は昨日、憂慮すべき信号を受け取った。一帯にある複数の植民地から届いた映像だ

私は座り、複数の星で記録された大量殺戮の映像の一部を見た。激しい揺れと共に、ありとあらゆる建造物が崩壊し、またたく間にいくつもの街が消滅していく。

NOAH : 我々は急いで調査と救出に向かったが、完全に壊滅していた
MAYA : これは何なの?
NOAH : 分からない
MAYA : 誰が撮影しているの?何を撮っているの?
NOAH : 分からない。これらの異変はエリアにあるすべての物を破壊する

それが何だったにせよ、ONIは秘密にし続けることはできなかった。その力は目撃した者を驚愕させ、壊滅的な破壊をもたらした。

MAYA : それで、私はなぜここに?
NOAH : 君は配置転換された。我々にはまだFEROが必要だが、これが君の新しい任務だ。これらの植民地の1つへ行って、情報を集めてくれ。この出来事の詳細を調べるのに力を貸してほしい

なぜ情報を集めるのが私なのか彼に聞いた。ONIに雇われている科学者はたくさんいた。

NOAH : 我々は攻撃を受けた植民地の安全を確保するために全力を尽くしてきた。これまでに4つの植民地の安全を確保したが、5つ目はNCAに支配されていた
MAYA : 新植民地連合に?彼らが関係しているの?
NOAH : 分からない。だが何が原因にしろ、植民地を奴らの手に渡すことはできない。我々は情報をコントロールしようとしているが、広まる噂が各植民地で混乱を引き起こしている

非主流派のNCA派閥とは何度も小競り合いをしてきた。再び彼らと関わり合うつもりはなかった。

MAYA : でも…なぜ私なの?スパルタンを送れば?
NOAH : 何が起きているか分かるまで、機甲部隊は送りたくない。誰かに現地へ行ってもらう必要があるんだ。反乱者たちが信用する誰かに

事態を理解し始める前にノアが近づいてきて、私の襟にNCAのピンを付けた。

MAYA : これは何?
NOAH : 優秀な仲間だ。ブラックボックス、マヤに初めましてと言って
BLACK BOX : “マヤに初めまして” 失礼、そういう意味ではないと分かっていましたが、プログラム上の問題で止めることができませんでした
MAYA : 冗談でしょ?AI?
NOAH : 上層部からの命令だ。この作戦は最重要だ。危険を冒すことはできない
BLACK BOX : マヤ、一緒に任務を行うのを楽しみにしています。いろいろ聞きました…あなたのことを
MAYA : 納得できないわ
BLACK BOX : 納得できない?それはこれまでの活動範囲を超えた高リスクな作戦へ配置されたことに対してですか?それとも高い知能と豊富な経験を持ち、この作戦の成功に必要不可欠な知識を持つAIと組まされたことに対してですか?
MAYA : つまり、これから私の行動は管理されるということか?
NOAH : 他に選択肢はない、マヤ
MAYA : 待って…アリは?彼はNCAに潜入しているんでしょ?
NOAH : 我々は彼との交信を復旧させようとしている。彼は攻撃の情報を発信した直後に姿を消して…
MAYA : 待って…攻撃されることを知っていたのに何もしなかったの?
NOAH : 何も知らなかったんだ、マヤ。情報は信頼性を欠く情報源から届いたもので、我々も検証しようと努力したが…
MAYA : 情報はどこから届いたの?
NOAH : それは教えられない。だが過去に我々を攻撃した者とだけ言っておこう
MAYA : アリは…
NOAH : アリは生存しているかもしれない。地上のことは何も分からないんだ。あの野営地で何が起きているか知る必要がある

この任務は想像よりはるかに大きなものだった。逃げ出したい気持ちを落ちつけるにつれ、暗い現実に襲われた。これまでの作戦で私が相手にしていたのは人間だった。危険な過激派もいたが、人間であることには変わりない。今回の相手は違った。とてつもなく巨大で、強大な力を持つ何か。これらの出来事の原因が何で、何が植民地を壊滅させたにしろ…全人類が危機に瀕している。

MAYA : 分かった。やるわ


エピソードS2.INT 通信失敗


映像MORSE-CAM-AB


CDR サリバンからのメッセージ

オスマン提督へ

本日の放送中に起きた問題について、心よりお詫びさせていただきます。放送の実施を監督する立場の人間として全責任を負う所存です。私と部下のボレン中尉は、この状況の危険性と、今回の失態が海軍情報局に与える悪影響を十分認識しております。

説明を求められている事項についてですが、ボレン中尉に渡された原稿は、私自身と他の上級士官によって確認・修正されたものであったことを添付した記録により確認しました。ボレン中尉は重責による心理的負担から集中力を欠き、お気づきのように、ジョン-117最上級兵曹長の戦死が発表された日付を読み間違えました(2558年10月27日と報告されたはずでした)彼女の心からの謝罪を、提督とUNSCの指導者に伝えさせていただきます。

より経験のある上級士官ではなくボレン中尉を選んだ理由を問う提督の質問についてですが、放送の計画と個人的な評価に基づき、品行・演説の能力・外見という観点から彼女が今回の放送に適任であると判断しました( 詳細は“揺らぐことのない敬虔さ”と“信頼に足る誠実さ”の項目を索引)。ボレン中尉は今回の重要な任務を遂行する準備はできていると断言しておりました。その言葉を信用し、間違った判断を下したことに対する全責任は私にあります。

ボレン中尉は直ちに、遠く離れたBXR-730採掘コロニーにある工業情報開示管理部門へ転属させられました(彼女の移動は決定後すぐに施行)。彼女の仕事が表に出ることはなく、今後は私の部下によって毎週チェックされます。

繰り返しになりますが、この度の遺憾な出来事について改めてお詫びさせていただきます。他の懸念事項や、さらなる質問があればお知らせください。

謹んで提出
マイケル・サリバン
上級通信責任者、海軍情報局
中佐、UNSC海軍
ボストン、地球


重要な事例

コンラッドポイントの惨状を表す適切な人間の言葉はこの世に存在しないのかもしれない。「穴」「穿孔」「クレーター」、どれも小さすぎる。「不可能」と言った方がしっくりくる。だがそこに「悲惨」と「可能」と言った言葉が足されたらどうなるか。


エピソードS2.02. 火が血へと転ずる時

廃墟となったシティの中で、マヤは狂人となった女性と出会う。そして各コロニーでは英雄の死を悼んでいる。

[デジタルログを文字化する]
コンラード ポイントに向かう途中、まだ私の頭は混乱していた。キャンプへの襲撃、これらの出来事の首謀者であるベン… もう私の手には負えなかった。でも親しみを感じることもあった。ムシャク モラディを監視していた時のことを思い出した。ベンに私のことをバラそうとした時、彼は何かに気づいていた。彼らに関する異様な噂が深宇宙に広まっている。その週間後、アリはONIの司令部に警告を送っていた… これらの出来事はすべてつながっているの?

ONIが隠している数々の計画。そのいくつかが表に出てくるのは時間の問題だった。

BLACK BOX : マヤ、集中してください
MAYA:考え事をしていたら、いつの間にかコンラード・ポイントに近づいてた BLACK BOX : 1 つの星を闇に変えた出来事は宇宙に存在する恐ろしい謎です。しっかり準備してください。あの雲の下には何があるかも分からないし、今日ここで死にたくありません

この作戦行動は不安要素に満ちていた。過激派反抗勢力NCAが支配する混沌に満ちた場所、コンラード・ポイントに私たちは近づいていた。私と彼らをつなげる唯一の存在がアリ・レズニク諜報員だった。でも彼は数週間前に姿をくらましていた。そして今、激震的な出来事が起き、この星は闇に包まれていた。それらの不安要素によって恐れや差し迫った危険を感じてもおかしくはなかったが…なぜか、そうならなかった。はるか遠くに存在する非現実のことのように感じていた…頭の中を整理する必要があった。

BLACK BOX : 地上にいる誰かがアナログ式の応答装置でメッセージを送っています
MAYA:何ですって?
BLACK BOX : これです。“要注意。最終侵入に向けてソナーを使用せよ。友好的な信号に対して新しい座標を送る”
MAYA : アリ…
BLACK BOX : どうやらレズニク大尉は無事なようです

メッセージを送ったのは彼に間違いなかった。並外れた才能と奇抜な一面を持つリーダーであり、良き友人でもあるアリ・レズニクは、私が出会った者の中で最も機知に富んだ人間の1人だった。諜報員として、卓越した専門的知識で複雑な社会生態系を取りまとめていた。でも皮肉なことに、実際の科学技術においては芸術家的思考の持ち主だった。闇に包まれた世界から信号を送る方法を見つける?危険を冒して他人に警告する?その行動は間違いなくアリだった。

MAYA : 緊急降下のためにシャットダウンする
BLACK BOX : 問題は、これらの警告は人間に向けたものなのか?それとも人間以外の脅威に向けたものなのか?
MAYA : それは… すぐに分かる

>控え目に言っても簡単な降下ではなかったが、目立たないように降下し、減速のタイミングをできるだけ遅らせた。そして輸送船を外からは見えにくいギザギザの渓谷へ静かに降ろした。何に飛び込もうとしているかは検討もつかなかったが、戻る方法はしっかりと確保していた。

BLACK BOX : 岩が邪魔でうっとうしい。ここにいる者たちが怒るのも不思議はありません、彼らは荒廃した土地にキャンプを作っている。正直、私自身も腹が立っています。
MAYA : ええ、まあ、彼らは余暇を過ごすためにここに来ているわけじゃないと思う
宇宙の果てにあるコンラッドのような星は、NCAにとっては格好の隠れ家となる。彼らは放棄された鉱山施設を乗っ取り、軍の訓練場を建設している。ここでの生活?気の弱い者は聞かないほうがいい。
BLACKBOX : この場所は素晴らしい。ただ素晴らしい。あるのはすべて…岩 MAYA : もういいわ…ここには誰もいない
BLACK BOX : 見晴らしのいい場所に登ってみたらどうです?あの岩の上です

岩の上に登ると、突然太陽が目に飛び込んできた。シールドで目を保護すると、ようやく広がる景色を見ることができた。私たちの後ろから横にかけては、突き出た岩が並んでいた。でも頂上部から下に向かうにつれ、より平らなエリアが広がっていく。光の中で目を細めて見ると、遠くに巨大な産業構造物のシルエットがかすかに見えた。

MAYA : ここにいるのは危険ね。私たちの姿が丸見えよ。
もう一度見渡してみると、頂上部を超えたエリアがどうなっているかに気づいた。そこはクレーターだった。巨大な穴。まるで何者かが星の表面の大部分を引き裂いたかのようだった。そのあまりの大きさに全体が見えていなかった。その光景を見て恐ろしくなった私は、彼が近づいていることに気づかなかった。
ARI : よく聞くんだ、俺の言うとおりにしろ
振り返るとアリがいて、私に銃を向けていた。
MAYA : アリ?何をしてるの?
ARI : 口を…開くな。両手を上げろ!動くな、話すな。彼らが見ているかもしれない。君は偶然ここに現れて、俺は君のことは知らない。君は銃を向けられて恐怖している。バッグを渡すんだ!
アリは私からバッグを奪うと、片手で中を調べた。私は彼に合わせた。
MAYA : 危険な物は入ってないわ
ARI:確認した、それじゃ厳しく問いただすのはやめよう。あの出来事が理由でここに来たんだな。
MAYA : ええ
ARI:バッグを返す。我々の勘違いのようだ。何者か名乗れ。
MAYA : 反乱軍リーダーのFERO
ARI : 君のことは知っている。状況は理解した
MAYA : あれが起こった時、あなたはここにいたの?
ARI : いや、その直後に来た。今から銃を下ろす、俺たちは敵対する関係ではない
BLACK BOX : それでは、その形式的な行動をやめて、作戦の話を聞かせてもらっても?
ARI : AIか?
MAYA : そうよ
BLACK BOX : 名前はブラックボックス。あなたの評判は知っています、大尉。
MAYA : 会えてうれしいわ、アリ。みんなあなたは死んだと思っていた。
ARI : それで君はどう思っていた?
MAYA : 私の信念は揺るがなかった
ARI : そうか。旅団で来ているのか?
MAYA : 私とブラックボックスだけよ。NCAが知っていること…もしくは持っているものを暴いて、司令部に報告する。
ARI : まあ、俺も多くのことを知っているわけじゃない。クレーターができた時、俺たちは近くにいた。だがここに到着した時には、すべて終わっていた。知っているのは、その出来事が壊滅的ダメージを与え、この星にあるすべての文明を焼き尽くし、大きさ800メートルの巨大な穴を残したということだけ。NCAは現場を封鎖していて、許可を持つ少数の者しか入ることができない。イルサは次の行動の計画を立てている。
MAYA : イルサ?イルサ・ゼーンがここにいるの?彼女は死んだと思っていた ARI : 知らなかったのか?俺が姿をくらます前に送った最後のメッセージに書いていた
MAYA : そんな… 私は…
ARI : くそ、彼らは何も知らせないまま君をここに送ったのか。それとも彼らも知らないのか… イルサはインフィニティを攻撃したあと、NCAの体制支持者に拾われた。それ以降、彼女はこの派閥を完全に無視し、邪魔だと思う者を処刑している。

イルサ ゼーンは道を誤った。ある時、彼女は究極の非装甲殺戮マシンを作るスパルタン計画を予定したが、途中で逃げ出してしまった。NCAへ亡命した彼女はすぐに洗脳され、ドレイク提督の飼い犬に昇進した。

ARI : そしてあの出来事が起きた時、彼女は俺たちをここへ連れてきた。もう殺戮は行われていないようだが、今もみんな緊張状態のままだ。通信装置が使えないから、ここを離れることができない
MAYA : でも、あなたはどうして逃げなかったの?
ARI : もちろん逃げることも考えたが、できないんだ。ここの連中が暴発しないよう蓋をしている。彼らは星系全体を滅ぼすのに十分な熱核兵器を所持しているし、イルサはUNSCとの全面戦争の準備をしている。俺は平和的な方向に舵を切るよう仕向け、ONIがイルサを消すまで、彼女に核兵器のボタンを押させないよう尽力している
MAYA : 待って…進む前にノアに状況報告をしなきゃ
BLACK BOX : それはやめておいた方がいい、マヤ。レーダーに反応があった、数人の兵士がこちらに向かっている
ARI : 君がONIに拉致されたあとの流れについて手短に説明してくれ
MAYA : 拘留から逃れて囚人輸送船を奪った。彼らは植民地の襲撃について尋問した。心配になった私は脱出したあと、ここに来た
ARI : ひどい設定だな、“運よく脱出できた”以外の話は思いつかなかったのか。それじゃ、それでいこう。イルサは様々な場所から反乱者を引き入れている。だから君も組織に加わる仲間の1人だと説明する。着いたら目立つ行動は避けてくれ。たとえ素性がバレていなくても、イルサが邪魔者だと考えれば君は殺される。それから、AIを失いたくなかったら静かにさせておくんだ
BLACK BOX : そうさせてもらう
ARI : もう1人見つけたぞ!
RAJ : 防衛線の外で何をしていた、アリ?
ARI : 防衛線をチェックしているんだ、ラジュ。必要なことだ
重装備をしたイルサのクルーは、困窮した様子で眠っているように見えた。イルサが彼らを警戒態勢にしているようだった。緊迫した状況だったがアリが魔法をかけ笑顔を引き出すと、私はNCAの客人として野営地にエスコートされた。
荒廃した精製所の中は、多くの派閥から成る反乱者たちで溢れていた。酒を飲んだり叫んだりする様子は、まるで熱狂する祭りのようだった。何かを祝っていたが、少し戸惑っているようにも感じた。
MAYA : どういう状況なの?
ARI : いい質問だ。昨晩までは墓場のように静まり返っていた。イルサの部下が大佐のウイスキーのケースを開けて、お祝いだと言った。全員かなり酔っている MAYA : それは見れば分かる
ARI : それじゃ、飲み物をもらってきたらどうだ?俺は見回りをしてくる。

目立つ行動を避けながら、知っている顔がないかと辺りを見回した。だが共感を抱くような反乱者はいなかった。彼らは私の仲間とは違っていた。血が流れる現場を目撃し、民間人を攻撃したグループを見た。ここにいる者の半分は傭兵だった。“炎から血へ”という復讐以外の信念を持って戦っている者は1人もいなかった。虐殺を正当化するために旗を掲げているだけ。私がFEROとして大義のために戦っていた時とは、すべてが正反対だった。早くアリが戻って来ないかと思っていた時、聞き覚えのある声が聞こえた。

BOSTWICK : FERO!
MAYA : ボストウィック? まさか…
BOSTWICK : やっぱり生きていたのね!捕まるわけがないと思ってた!あなたが連れ去られた時、 みんな散り散りになって、あなたが死んだと思っていたけど、私はそうじゃないと信じてた!あなたはONIに捕まるような人じゃない

ボストウィックはひどく酔っぱらっていた。身長150センチ、体重45キロほどの彼女はこの集団の中では目立つ存在だったが、酔っていると余計な注意を引くことになる。

MAYA : ボストウィック、ここで何をしている?
BOSTWICK : 散り散りになったあと加わったの。私たちのグループの半分は殺され、噂は山火事のように素早く広がって…
MAYA : それで?NCAが守ってくれると言ったのか?
BOSTWICK : そういう風に言えるかは分からないけど、彼らは私の力を必要としていた!
(酔ったボストウィックが、ふらついてボトルを割った)
BOSTWICK : 今の見てた?割れちゃった、私はただ…

私が最初に出会った時、彼女は怒りを抱いた17歳の女性だった。UNSCがデクムで起こした事故で両親を失ったばかりだった。ボストウィックの両親は軍事基地の外で些細な抵抗運動に参加していた。酔っぱらった兵士が、コヴナントの補給船から奪ったプラズマグレネードを放り投げていたら、その1つが彼女の両親のところへ…。兵士たちは軽い叱責を受けただけだった。ボストウィックは事務的な謝罪の手紙を受け取った。その後、彼女はUNSCのせいで孤児となった外周植民地の子供たちを集めて小さな組織を作った。最初は小さな窃盗を行う程度だったが、私と出会った頃には、より暴力的な活動を計画するようになっていた。そこで私は彼女を自分の部下に迎え入れた。彼女は献身的で、飲み込みも早かった。私は彼女の怒りを良い方向に導こうとしていた、でも…彼女にはまだ成長しなければならない部分がたくさんあった。

MAYA : 彼らはあなたに何をさせているの?
BOSTWICK : 主な仕事は防衛線のチェックよ、北側のね。穴の上で行われる作戦行動の護衛を任されてる。大勢の科学者が出入りして、測定してる
MAYA : 測定?それについて何か…
BLACK BOX (Over Coms) : マヤ
MAYA : BB、静かにしてろと…
BOSTWICK : え?
BLACK BOX (Over Coms) : “しゃべるな”と言おうとした
BOSTWICK : 誰に話しているの?
BLACK BOX (Over Coms) : あなたの外耳道に直接語りかけています
MAYA : ごめん…気のせいだった…何でもないの
BLACK BOX (Over Coms) : 詳細な報告を司令部に送信しました。どうやら司令部は我々の現在地に攻撃を仕掛けるようです。イルサ・ゼーンを殺す機会は限られています。時間がありません。今すぐここから出ないと
MAYA : アリ…
BOSTWICK : どうしたの?大丈夫、FERO?
BLACK BOX (Over Coms) : 自然に振る舞って
MAYA : ああ、ええ、大丈夫。さあ、ここから出ましょう
BOSTWICK : ええ、そうしましょ。待って…でも、どこへ行くの?

爆撃が始まる前に避難しなければならなかったが、そのための時間は十分に与えられなかった。私は出口を探した。その時、アリが群衆の中から再び現れた。

ARI : ほら、これを
アリは私にデータチップを渡した。彼は狼狽しているように見えた。
MAYA : これは?
でもそのことについて質問している時間はなかった。
MAYA : すぐにここを離れないと

アリは私の目を見て、状況を理解した。

ARI : 離れず慎重に歩くんだ

入口まで半分ほどの距離を進んだところでドアが下ろされた。すべてのドアが封鎖され、私たちは閉じ込められた。アリが別の脱出ルートを考えていると、イルサ・ゼーンが部屋に入ってきた。まるですべての空気が吸い取られているかのように感じた。反乱者たちで溢れている施設全体が、突然ゾッとするほど静まり返った。彼女がフロアを横切ると群衆は分かれて道を作り、全員が彼女の方を向いたが、多くの者は目を背けていた。そして彼女は私たちが立っている場所から5メートルほどのところで止まった。アリは慎重に私の前へと移動した。

ARI : 下がってろ

アリの肩越しに彼女が見えた。イルサは…驚くほど大きかった。スパルタン計画のどんな技術が用いられたのかは分からなかったが、彼女の肉体を強化したのは間違いなかった。でもそれによって…彼女の中の何かが壊れてしまった。彼女の眼は光り輝いていた。どこか不安定で、人間的ではないように感じられた。

ILSA : これは…お祝いだ。祝うべきことだ。我々は短い時間で多くのことを変えた。お前と出会った時、そこには規律も統一性もなかった。そこにいたのは異なる義務と信条を持つ大勢の不適合者だった。問題の原因は指導者にあった。大佐は、このNCAの伝説的派閥が個人の利益を追求する集団に退化することを許していた。お前たちは散漫で動きが鈍く、それは死刑に値していた。私は彼を任務から解放した、なぜなら不適合者の集団では戦争に勝てないからだ。だが巨大なマシンなら勝てる。同じ目的を持って動く無数の小さな部品から成る巨大なマシン。それをここで作る必要があった。
そしてそれは簡単なことではない。すべての部品に働く場所を与えなければならないし、部品がフィットしない時は創造力を働かせなければならない。フィットするように部品の一部を切り取り、二度と外れないように力で押し込む。やらなければならないことを実行し、余分なものを取り去る。我々と行動を共にする全員が自分の居場所を見つけ、強力なマシンを完成させたことを嬉しく思う。そしてそのスイッチを入れる時は間もなく訪れる。
外にある巨大な穴が象徴するのは、この戦争への入り口だ。だからお前をこのコンラード・ポイントに連れてきた。展望は変化している。あの穴が原因でUNSCは後れを取っている、そして我々はその弱みを利用する。必要だったのは的確なタイミングだ。それが私を告示へ導く。

彼女は部屋を完全に支配しながら歩き回った。いつ誰かの生命を吸い取ってもおかしくないような感じだった。

ILSA : スパルタンの手によって、友人や愛する者の命を奪われた者は何人いる?そう、我々は今日、別の隊列に大物を加える
MAYA : 彼女は何の話をしている?
BLACK BOX (Over Coms) : フィードを確認中、待機せよ…信じられない
MAYA : 何?
BLACK BOX (Over Coms) : あり得ない
ILSA : ここと他の4つの植民地で起きた激震的な出来事は、我々の時が訪れたということを証明している
BLACK BOX (Over Coms) : これは…マスターチーフ
ILSA : マスターチーフはーー
BLACK BOXD (Over Coms) : 彼は死んでいる
ILSA : 死んだ


絡み合う関係

壁に書かれた文章と、荒れ果てた彼の隠れ家。どちらも私には理解し難いものだった。


エピソードS2.03 隠れ家

友人が生還し、隠れ家が罠になる。そしてマヤは彼女の人生を永遠に変えることになる決断を迫られる。

[デジタルログを文字化する]
まだ爆発による耳鳴りが続いていた。ONIは私に潜入作戦を命じ、送り込んだ場所を本気で攻撃した。ほとんど警告もせずに。民間人はもちろん、私やアリも守ろうとはしなかった。私は彼らにとって、ただの消耗品だった。それまで抱いていた情熱や信念が消えていくのを感じた。UNSCが爆撃し反乱軍が復讐のために立ち上がる、同じことの繰り返し。サリバンとイルサは正しかったのかもしれない。他のものが入り込む余地はなかった。

BOSTWICK : ううっ!

負傷したボストウィックを見ると、責任を感じられずにはいられなかった。迷える純真な少女を引き取り、自分にとって都合のいい兵士へと変えていた。私は自分の行動を正当化し、大義のためにやっていることだと自分に言い聞かせるようになっていた。

MAYA : 傷を見せて
BOSTWICK : 触らないで!
BLACK BOX : 有効な医療措置を施すまで、鎮静剤で落ち着かせることを提案します
BOSTWICK : 冗談じゃないわ!
(マヤがボストウィックに鎮静剤を与える)
MAYA : 何も考えずに…休んで
BOSTWICK : FERO…

ボストウィックが意識を失うと、私はデータチップに視線を移した。アリは異変に関する重要な情報を保存していた。私の中でかすかに残っていたONIに対する信頼も、あの爆撃によって消え去った。おそらく彼らはすべての出来事を隠蔽し、他の植民地を破滅へと導く。でも…このチップが正しい者の手に渡れば、多くの命を救うことができるかもしれない。私はONIにチップを渡すつもりはなかった。手に入れようとしていたのは本当の答え。その答えを教えてくれる人物が1人だけいた。でも問題が1つだけあった…彼は数ヵ月前に死んでいた。
(マヤが船を着陸させる)
隠れ家は、家と呼べるものではなかった。外周植民地にある不毛の地ビントゥロンのはずれにある崩れかけた古い農場。時々現れる異星人の商人以外に、この場所を訪れる者はいない。暮らすのに適した場所とは言えないが、身を隠すには最高の場所だった。

BLACK BOX : この場所は?隠れ家のデータベースにありません
MAYA : 誰にも知られていない場所よ
BLACK BOX : ここには信号を妨害する何かがあります
MAYA : ええ、それでいいの

隠れ家を所持するよう教えてくれたのはアリだった。
ONIの潜入作戦に参加した者は、すべてを失う。作戦を遂行するために、過去の記録はすべて消される。アリは自分だけの場所を常に確保しておくことが大事だと教えてくれた。記憶を保管し、ONIに消された人生とのつながりを保つための場所。深く潜入しすぎた時の逃げ場所。自分自身や秘密を隠す場所。

MSHAK (ドア越しに) : そこにいるのは誰だ?入って来るな!こっちには銃がある!2つもあるぞ!
MAYA : 邪魔しないで、ムシャク
MSHAK : マヤ!生きてたのか!二度と戻って来ないと思ってたよ!もうここには誰も来ないと思ってた!

粗末な格好に、脂ぎった髪の毛とまばらに生えた細いヒゲ。顔の肉が落ちたことで、落ち着きのない充血した目が、より一層不安そうに見える。

MAYA : まったく、今まで一体何をしていたの?
MSHAK : 君には想像もできないことさ!待て、なぜ死人を運んでいるんだ?
MAYA : 彼女は死んでない。ほら、寝台に運ぶのを手伝って
BLACK BOX : ムシャク モラディ
MSHAK : 驚いたな!それはAIか?
BLACK BOX : 死んだとされている人間にしては元気ですね
MSHAK : AIと一緒に行動しているのか?
MAYA : ブラックボックスよ
BLACK BOX : 公式報告では、あなたは殺されたことになっていました。それもかなり残酷な殺され方で
MSHAK : 殺された方がマシだったよ
BLACK BOX : 彼は拷問されていたように見えます
MAYA : 拷問はしていない
MSHAK : 拷問じゃない?それじゃ、この状況は何て言うんだ?彼女は俺からコンピューターパッドを取り上げ、ここへ置き去りにした!ウェイポイントや“スラッシュ”にアクセスすることもできない!だからずっと紙の本を読んでいた、紙の本だぞ!続きを読むためにはページをめくらなきゃいけない!いったいどんな生活だよ、ここは24世紀か?ハイパーリンクも無ければ、映像もない。まだ読み終わってないけど、仮に最後まで読んだとしても感想を言い合う相手もいない。だから友達を作った。トニーという名前だったけど、彼が食べ物を盗んでケンカになった。そうだ、食べ物!食べ物に関しては、もっとひどくて…

私はムシャクを殺すことができなかった。彼は私の秘密を暴き、それをベンに伝えようとしていた。だから抹殺する必要があった。でも…あの夜、彼の家に侵入した時、怯えた彼は壁に頭を打って気を失った。彼は優秀なハッカーだけど、危険人物ではなかった。だから彼を隠した。何もない場所へ連れて行き、あらゆる通信を遮断する妨害装置を建設した。でも外の世界とのつながりを数ヵ月断ったことで、彼は少し…テクノロジーに飢えていた。だから本物のAIは彼にとっては最高のオモチャだった。

MSHAK : 君は宇宙一賢いオモチャだ。このチップで動いているのか?
BLACK BOX : ある意味そうです。それは…
MSHAK : 待って、質問がある。よく聞かれると思うけど、他のAIは人間みたいな形をしている。でも君は、ただの大きな青い立方体だ
BLACK BOX : 私は純粋な知性の集合体です。人間に気に入られるために、外見を変化させる必要はないと感じています。私は私、ブラックボックスという個体です
MSHAK : ああ、それはそうだけど…でも箱の色は青だ
BLACK BOX : 黒は光のない状態なので、ホログラムで黒色を映すことはできません
MSHAK : 君のことはブルーキューブと呼ぶことにするよ
(ブラックボックスがムシャクにショックを与える)
MSHAK : 痛てて!電気ショックを与えたのか!?
BLACK BOX : いえ…いや、ああ、そうです
MSHAK : いいか、ブルーキューブ。俺はこのチップを壊すこともできる、そうすれば…
MAYA : ムシャク!やめて
MSHAK : なんで一緒に連れてきたんだ?こいつはONIだ
MAYA : ムシャク、私もONIの人間なの
MSHAK : それじゃ君が俺を殺さずにかくまっていると、彼がONIに報告するかもしれない。AIを信用しちゃだめだ!ONIの連中は君に、AIは完璧な存在だと思わせようとしているが、奴らがどうやってAIを作っているか知ってるか?死者の脳を取り出し、新しくプログラミングしてつなぎ直しているだけだ!彼らはコンピューターゾンビなんだ。
BLACK BOX : 我々は聴力も優れているので、あなたの言葉もよく聞こえます
MAYA : ムシャク、今は異変のことに集中して。あなたもそれを追っていたんでしょ?それは今ここにいて、実際に存在する。すでに5つの植民地を破壊した。その1つで重要な情報が詰まったデータチップを手に入れたけど、それ以外の事情が分からない。ウェイポイント索引には載っていないような情報が必要なの。スラッシュでしか見つけることのできないような情報が
MSHAK : 待って…ということは…俺のコンピューターパッドを返してくれるのか?
MAYA : 待ってて
MSHAK : やった!
MAYA : 待ってて!
MSHAK : ああ、はい、待つよ!
MAYA : 制限された通信回線を開くわ。あなただけが使える暗号化された周波数だから、ブラックボックスがONIに連絡することはできない
BLACK BOX : 我々の間の信頼の欠如を感じます、マヤ
MAYA : 何が起きているのか急いで調べて
MSHAK : 任せてくれ。10億パーセントの力でやる。おっと、未読のメッセージが大量にある。ウソだろ!
MAYA : どうしたの?
MSHAK : 信じられないことが起きた…オンラインゲーム「アンゴイ・ファーマー」での俺のランキングが下がってる!
MAYA : ムシャク!
MSHAK : 10億パーセントの力でやる

ムシャクがスラッシュの秘密を暴こうとしている間に、私はボストウィックの怪我の様子を見に行った。隠れ家はムシャクによって荒らされていた。洋服や食べ物の包装紙が、そこら中に散らかっていた。でも私の棚だけは、手が付けられずきれいなままだった。古い写真を手に取った。幼い頃の私がトロフィーを持っている。スペリングコンテストで勝った時の写真だと思う。正確な日付を思い出すことはできなかったが、撮った場所は覚えていた。父の古い山小屋。私が隠れ家を作った時、その山小屋のことを思い出していた。父が自分で彫った木製の壁とドア。その写真はいつも、とても現実的で不変的な記憶を感じさせてくれた。
過去のことを思い出しながら周りを見回すと、目を覚ましたボストウィックが私を見つめていた。彼女の目は純粋な憎悪に満ち、完全に油断していた私をとらえていた。私を殺そうとしているように見えた。
私が言葉を発する前に、手術用のメスを持ったボストウィックが近づいてきた。

BOSTWICK : うわああ!

だが彼女の体はまだ回復していなかった。簡単に取り押さえると、徐々に痛みで苦しみだした。
MAYA : あなたの気持ちは分かるわ。同じことをされたら私も怒ると思う。でも話を聞いて…
BOSTWICK : さっさとやれ!
MAYA : 何をやるの?私は…
BOSTWICK : やれ!私を殺せ、拷問にかけろ。裏切り者に捕まるくらいなら死を選ぶ
MAYA : 何ですって?私は裏切り者じゃ…
BOSTWICK : あんたはONIの人間だ!そうなんでしょ!?
MAYA : そうよ、でもあなたを守ろうとしてる。あなたは私の友達だから
(ボストウィックがつばを吐く)
BOSTWICK : FEROと私は友達だった。あんたのことなんか知らない!
MAYA : そうね、あなたは私のことを知らない。でも私たちに間に大きな違いなんてない、そうでしょ?だから私を信じて…
BOSTWICK : 信じる?笑わせないで、あんたの両親もONIの将校に殺されたっていうの?
MAYA : いいえ、ボストウィック…
BOSTWICK : 一緒にしないで。あんたは嘘つきよ
MAYA : あなたの言うとおりよ。でも…信じてもらえるか分からないけど…あなたは友達に一番近い存在なの。だから真実を伝えたい。少なくとも私にはその義務がある…だから、なんでも聞いて
BOSTWICK : …本当の名前は?
MAYA : マヤ・サンカー
BOSTWICK : ふーん…それでどのくらい裏切り者をやっているの?
MAYA : ONIに加わったのは、ちょうどあなたの年齢くらいの時だったけど、特殊任務に就くことはなかった。そして5年前、彼らは私をFEROに仕立て上げた

何年間も騙し続けていたボストウィックに本当のことを打ち明けた。話をして信頼を取り戻すことが彼女を守ることになると自分に言い聞かせながら。でも彼女の質問に答えながら、心の底ではなぜこんなことをしているのか分かっていた。ようやく真実を伝える時がきた。

MAYA : 違う!攻撃のことは本当に知らなかった。必要最低限の情報しか知らされていなかったの
BOSTWICK : 私を仲間に引き込むつもりだったの?あんたみたいなONIのスパイにするつもりだった?
MAYA : 違う!私は…そんなんじゃなくて…
BOSTWICK : あなたはFEROとして真実を見つけると語っていた…頭を使って彼らを倒し、外周植民地の人たちを救うと言ってた…
MAYA : その言葉に偽りはなかった。何よりも、私はただ…分からないの。長い間、偽りの自分を演じているうちに…時々、自分はFEROなんだと感じるようになった。説明するのは難しいけど…彼女が望むことを私も望んでいる。いろいろな意味で、FEROでいることが正しいと感じるようになって…
MSHAK : マヤ!
急いでムシャクのところへ行くと、彼は呆然と口を開けていた。
MSHAK : 何でこう言ってくれなかったんだ“ムシャク、コンピューターパッドを返すわ、あっ、それとマスターチーフは死んだから”って
MAYA : ああ、他のことに気を取られていたから。それで何か分かった?
MSHAK : 情報がないというのが公式な報道だ。同じ言葉を繰り返してる“彼は人類を守る任務中に命を落として…偉大な英雄だ”ってね。でもスラッシュには様々な推論が飛び交っている。存在している見解の偽りを証明する見解があったり、UNSCがより大きな陰謀を隠すために彼の死を利用しているなんていう説もある。
彼らはまだマスターチーフが生きていると思ってる。

BLACK BOX : それは信頼できる情報です
MAYA : でもマスターチーフが死んだと発表することでUNSCに何の得があるの?なぜ彼の伝説を終わらせるようなことを?
BOSTWICK : 彼の伝説を強固なものにするためよ
ボストウィックがよろめきながら部屋に入ってきた。
BOSTWICK : あなたも前に言ってたでしょ。英雄は自己犠牲によって生まれ、死によって伝説となる
MAYA : ええ、それでも分からない。異変を隠すためにやっているの?マスターチーフを殺すことが、どうしてそれを隠すことになるの?
MSHAK : 隠すことにはならない。真実の方が隠すより恐ろしくない限り。ビコの物語自体がリハーサルだったとしたら?もしチーフが命令に従わず、彼の存在が利益よりも不利益になっているとしたら…彼を消そうとしても不思議じゃない、だろ?

その時の私の頭はしっかり回転していなかった。でもムシャクの言葉が思い出させてくれた。ONIのAIボットによる統計分析が、規則に従わないチーフは生きているよりも死んでいる方が価値があると判断したら…彼らは躊躇せずに引き金を引く。私には気づけたはずだ、同じ分析によってそういう経験をしたのだから。
MAYA : それで異変について何か分かった?
MSHAK : 1つの見解を見つけたけど、それは新しい新約聖書みたいな考え方だ。トライアドは知ってる?
MAYA : カルト宗教の?
MSHAK : そうだ、彼らは様々な場所に現れて、異変は偶然の出来事ではないと主張している。彼らは超越の一部で、教祖であるダスクが戻って来て、今起きている異変は…銀河系の終末だと言っている

トライアドは宗教の1つのようなもので、潜入作戦中に何回か彼らが集まる場所に足を踏み入れたことがあった。彼らは常に複合的な生命、超越、宇宙の終わりについて説いていた。絶望的な状況に置かれた者には正常に聞こえる異常な教え。彼らにとって幸いだったのは、外周植民地には絶望した者が大勢いた。彼らの教祖であるダスク・ジェヴァディムは、ウェイポイント上で多くの信者を獲得したあと、突然姿を消した。ONIは死んだか隠れていると確信していたが、信者たちは別の領域へ登りつめたと信じていた。

MSHAK : ONIは書き込みをブロックしているが、彼の言葉は広がり続けている。ほら、これを見て
ムシャクが映像を再生する。
DASC GEVADIM (Recording) : 諸君の奮闘のために、この因果と粒子の世界に戻ってくることを選択した。私ならこれらの異変の意味を明らかにできるかもしれない。究極の超越は諸君が手にするものだ。迷える子羊たちよ、今こそ生まれ変わるのだ!異変と呼ばれるこれらの出来事は…ニューエイジの到来を告げるものだ。解放されることによる統一、壮麗な不作法、震える肉体からの解放は、我々が長年にわたって執着してきたこと。これらの異変を恐れるな、その力を恐れるな。世界が震撼するように、人類は自我を目覚めさせてくれるメタバースの端で、存続の危機にたどり着くことは避けられない… 夜しか知らない我々は最初の夜明けの証人になろうとしている。それは…第3の生命の出現。私は避けることのできない運命として諸君の恐れを取り除き、絶望から希望の世界へと歩を進めるための手助けをする名誉を、慎みを持って授かった。目を覚まさない者には精神的大虐殺が待ち、その足元には深い闇が広がる。私には耐えることができない。これは始まりに過ぎない…
MAYA : 彼が異変に関する他の情報を持っている可能性は?
MSHAK : 可能性はある…この世界ではどんなことでも起こり得る。俺たちが暮らしている銀河でも、屁のような臭い息をする異星人が人類を滅ぼそうとした
BLACK BOX : 正確に言うとメタンガスです。それにアンゴイたちだけでは人類を滅ぼすことはできなかったでしょう
MSHAK : いいか、細かいことをくどくど言うな
BLACK BOX : 了解。覚えておきます… マヤ、我々は本来の目的から大きく逸脱しています。理性的判断を下して組織に戻りましょう
MAYA : 戻ることはできないわ。もうONIという組織を信じられない。あんなことがあったあとではね。私たちが集めた情報で彼らが何をしていたかは分からない
BLACK BOX : マヤ、ONIがあなたやムシャクが推測する恐ろしい組織であることを望みます
MAYA : それじゃ教えて、今ここで何が起きているの?
BLACK BOX : マヤ、あなたは今ここで不誠実な険しい道へ進もうとしています。データを持って私と一緒にONIへ戻るなら、滑落は避けられるかもしれません
MAYA : それは提案?それとも脅し?
(マヤのコンピューターパッドが鳴る)
MAYA : なに?
BLACK BOX : 着信のようです
MAYA : でもすべての通信信号を遮断した
BLACK BOX : そうではなかったようですね
NOAH (Over Coms) : マヤ!
MAYA : ノア?何なの?どうやって連絡を?なぜ爆撃のことを知らせてくれなかったの?
NOAH (Over Coms) : なんとか彼らを止めようとしたが、発言を封じられた。彼らは所有物を失うより、標的を排除する方が重要だと判断した
MAYA : ふざけないで、ノア…
NOAH (Over Coms) : マヤ、聞くんだ…
MAYA : 私は所有物じゃない!私は…
NOAH (Over Coms) : マヤ!時間がない。そこにいるのは危険だ!
MAYA : え、でもどうやって私の居場所を…
NOAH (Over Coms) : なぜ報告しなかった?彼らは君が逃亡したと思っているぞ。もうすぐ回収部隊がそこに到着する
MAYA : 何ですって?でもどうやって…
NOAH (Over Coms) : 聞くんだ、マヤ。彼らは君を迎え入れたいだけだ。悪いことは何も起こらない
MAYA : 違う違う違う…
NOAH (Over Coms) : マヤ、やめろ。聞くんだ。君が何をしても…
MAYA : さよなら、ノア
NOAH (Over Coms) : マヤ!君はとんでもない過ちを…
(マヤが通信を切る)
MAYA : 全員で移動するわ、急いで!

彼の言葉が何を意味しているのか理解した。私を迎え入れる。迎え入れる場所はミッドナイト・ファシリティ。施設に入ったら、二度と出てくることはできない。そうなるわけにはいかなかった。

BOSTWICK : どうして見つかったの?
MSHAK : ブルーキューブだ!スパイAIが俺たちを裏切ったんだ!
BLACK BOX : 私の通信機能は妨害装置によって無効化されていました。コンラード・ポイントから尾行されていたのでは?
MAYA : 時間がない!ベッドをひっくり返すのを手伝って
MSHAK : 分かった、でもなんで… 嘘だろ、俺のベッドにグレネードが敷きつめてある
MAYA : ボストウィック、体は大丈夫?
BOSTWICK : ええ
MSHAK : なんで俺のベッドにグレネードが?
MAYA : 走れる?
BOSTWICK : あんたの助けは要らない
MAYA : タイマーで10秒後に爆発させる。逃げるのに必要な時間を稼げるはず。外に隠れる場所はない、だから表に出たら走って
MSHAK : 走るのか…体育の授業をもっと真面目に受けておけばよかった
MAYA : 集中して。爆発で奴らの気を引いている間に船にたどり着けるはず
BOSTWICK : 爆発するまでは?
MAYA : 弾が当たらないように祈って
MSHAK : なあ、マヤ。しつこく聞くつもりはないけど、なんで俺のベッドにグレネードが敷きつめてあるんだ!?
BLACK BOX : マヤ、まだ戻ることもできる
MAYA : いいえ…それはできない…準備はいい?タイマーを作動させるわよ、3…
BOSTWICK : やりましょう
MAYA : 2…
MSHAK : マジかよ…
MAYA : 1、走って!

10秒が10億年のように感じた。彼らに発見されるまで5秒。

ONI TROOP : 逃亡者を見つけた!

その後の5秒間は…永遠のように感じた。

MAYA : 船に乗って!
(船に向かって走るマヤ、ボストウィック、ムシャクの横を弾が通過し、船に当たる)

気が付くと私は貨物室の中に立っていて、始動したエンジンが生み出す心地よい加速を感じていた。ボストウィックが痛みで体をよじらせていた。

MAYA : ボストウィック
BOSTWICK : 平気。大丈夫よ

船は大気圏を抜けたが、どこへ向かったらいいか分からなかった。雇い主は私を燃やそうとした。ボストウィックは機会があったら私のことを反乱軍に暴露していた。FEROは消えた。マヤ・サンカー司令官は…消えた。保管していたわずかな記憶は、地上の隠れ家の中で燃えている。過去の私が誰だったにせよ、その人物も消えてしまった。今の私にあるのは、投降させようとするAI、私を殺したいと思っている裏切られた友人、小心者のハッカー、そして私の命を危険にさらす重要な情報が詰まったデータチップ。これからどうしたらいいか分からなかった。でもその時、何者かが私の運命を決めた。
(船の警報システムが鳴る)

MSHAK : どうした?コンピューターゾンビが今度は何をした?
BLACK BOX : 私ではありません。我々の右舷に猛スピードで近づく船があります
MAYA : くそっ、ONIか。スラスターを全開にして回避する
BLACK BOX : 今すぐ身の安全を確保することを提案します
MAYA : 聞こえたでしょ!ベルトをして!

普通、宇宙空間では自分がどれほどのスピードで進んでいるかを体感することはできない。誰かにシッポを掴まれない限りは。
(船が突然停止する)
強制的な急停止ほど危険なものはない。警告されていなかったら、隔壁に叩きつけられていた。たとえベルトをしていても、Gの力によって体が締めつけられる。
ベルトを外してシートから崩れ落ちると、船のすべてのシステムが停止していた。

MAYA : みんな、大丈夫?

動力を切断された私たちは、どうすることもできなかった。エアロックのドアを通る彼らの声が聞こえた。ONIの回収部隊。立ち上がって戦おうとしたが、激しい目まいによってデッキに崩れ落ちた。私たちの船に乗り込むためのチューブが連結され、圧縮空気のシューという音が聞こえた。通路を通る彼らのブーツが床を鳴らす。私たちの施錠システムをハッキングする機械の音さえ聞こえた。
私はそのドアの反対側にいた。彼らに連れ去られたらどうなるかは分かっている。自分は勇敢だったと言いたかった。FEROなら勇敢に立ち振る舞ったはず。でも私はベンがどうなったか知っていた。痛い思いをするのが怖かった。自分を失うのが怖かった。死にたくなかった。
私は船に入ってきた彼らを見上げた。3つのシルエットが見えたが、私の視線はすぐにリーダーへと引きつけられた。最初に目に入ったのは鋭いくちばしだった。そして首へと伸びる鮮やかな赤い針毛、最後にニードラーを握るかぎ爪が見えた。それを私の胸に向けている。彼らはONIではなかった。この状況はそれよりもさらに悪く、予測できないものだった。
(ジャッカルが叫ぶ)
ジャッカル


悪趣味

船の状況と香りを説明するのに、キグ・ヤー“シチュー”は大いに役立っていた。どのようにして彼らが大量の目玉を手に入れたかということは分からないままだった。


エピソードS2.04 ジャッカル

略奪者キグ・ヤーはクルーを監禁し、古の言葉が警告となる。そしてマヤはすべてを賭ける。

[デジタルログを文字化する]
子供の頃、父に「この銀河で一番くさい匂いは何?」と尋ねたのを覚えている。父は若い時に訪れた畜産コロニーの話をしてくれた。そのうちの1つの植民地は、健康オタクの客に“非遺伝子組み換え、屋外でのびのびと飼育”が売り文句の食肉を生産していた。

現実の飼育環境は、それとは真逆だった。身動きもとれないほど詰め込まれた畜牛が地平線の果てまで広がっていた。飼育者のバギーが牛たちの背中の上を走れるほど隙間なく詰め込まれていた。空気は大量のハエと病原菌で満たされ、病気になりその場で死んだ牛たちの悪臭が漂い、死肉は赤い太陽の下で腐敗していた。その様子を鮮明に話す父の言葉を聞いた私は、まるでその場にいるような感覚を味わった。成長した私は、銀河一くさい匂いを体験した父のことを誇りに思っていた。
でも父は間違っていた。なぜなら彼はキグ・ヤーの海賊船内の匂いは嗅いだことがなかった。
(キグ・ヤーたちはクワックワッと鳴き、シューという声を発しながらマヤ、ボストウィック、ムシャクを引きずっている)

BOSTWICK : くそっ!放せ!
MSHAK : お願いだから鳥の化け物を怒らせないでくれ!

私たちは引きずられたまま船の貨物室を通り過ぎた。壁や床は長年蓄積されたスス、フン、そして紫色の血で覆われていた。こびりついた様々な物質が堆積し、洞窟のようになっていた。
(キグ・ヤーが互いにシューと言い合う)

MAYA : ブラックボックス、彼らは何て言ってるの?
BLACK BOX : あなたをこの先のエアロックへ連れて行こうとしています
MSHAK : 俺たちは死ぬのか?
BLACK BOX : その可能性は高そうです
(キグ・ヤーがマヤ、ボストウィック、ムシャクをエアロックの前に放り投げる)
BLACK BOX : 話し合うつもりはなさそうです

衛兵が背を向けた瞬間、ボストウィックが彼の上に飛び乗った。

BOSTWICK : この野郎!
(キグ・ヤーが痛みで声を上げる)

ボストウィックの動きは素早かったが、キグ・ヤーの素早さはそれ以上だった。彼は頭を振り下ろしボストウィックを部屋の反対側へ投げ飛ばした。
BOSTWICK : うわっ!うう!

放心状態になったボストウィックの手にはキグ・ヤーの羽が握られていた。キグ・ヤーがボストウィックの顔を睨みつける。その眼光から目をそむけることはできなかった。ボストウィックに反撃する力は残ってなく、震えていた。彼女は恐怖で動けなかった。私たち全員がそうだった。何とかしようと思ったが、頭が重く何も考えることができなかった。

BLACK BOX : 今から我々全員をエアロックの外へ放り出すと彼は言っています。そして汚い言葉で罵っています。とても訳することができない言葉で

人は死の直前に、それまでの人生を走馬灯のように見ると言われている。それは間違っている。目の中で起こることではないのだ。それは…巨大な想起。すべてのシナプスで同時に記憶の爆発が起こる。最初に飼った子猫、最後に吸ったタバコ、祖母の耳の皮膚、3年前にかけた電話、先週の夕食の記憶が甦った。無数の瞬間、鮮明なものとそうでないもの、一瞬で過去の記憶を遡る。FEROの記憶、マヤの記憶。それらがすべて…1つに重なり始めた。FEROとしての記憶は強烈で情熱的。マヤとしての人生の記憶は静かで、内密的で、非現実的だった。私は大きくなったら…教授になりたかった。他者の思考を知ることに興味があった私は生体心理学を学んだ。その頃は異星人の行動を研究する人間を軍が必要とするなんて思っていなかった。でもそんな彼らに拾われた私は、コヴナントとの戦争の間、ONIのために敵の心理分析を行っていた。サンヘイリの名誉と恩義、そしてキグ・ヤーに関する報告書は数えきれないほど書いていた…
すると突然、頭の中がクリアになった。

MAYA : ブラックボックス、これから言う言葉をそのまま訳して。“私はお前たちの仲間に何度も会ったことがある、だがジャッカルの中でも、お前たちは特に無能で愚かだ”
BLACK BOX : 状況をさらに悪化させるつもりですか?
MAYA : いいから。そのまま訳して
(ブラッ クボックスがキグ・ヤーの言葉で語りかける)

キグ・ヤーは欲深い日和見主義のハイエナ。

MAYA : “有益な人質を殺そうとする無知でマヌケな小鳥だ”と伝えて
(ブラックボックスが訳して伝える)

でもキグ・ヤーは臆病でもある。
(キグ・ヤーが叫び、激怒する)

BLACK BOX : この反応は予想できるものでした

キグ・ヤーのリーダーはボストウィックに背を向け、私に向かってきた。口を大きく開けて脅している。そして私の喉元で止まった。彼の息は熱く湿っていて死の匂いがした。私はピクリとも動かなかった。
それは…相手を征服するための儀式だった。ビビった方が負けるチキンレース。キグ・ヤーは勝てるかどうか分からない相手とは戦わない。彼は私を殺すことができた、それなのに驚いていた。驚いているかどうかは分からなかったが。

MAYA : 貴重な人質を宇宙空間に放り出したと知ったら、女艦長は何て言うと思う?
(ブラックボックスが訳す)

彼は立ったまま、乳白色の黄色い目で私の両目を交互に見ていた。激怒している、だが明らかに恐れていた。
(キグ・ヤーの1人がシューと声を発し、人間たちを移動させるよう合図を出す)

MSHAK : うう、奴は何て言ったんだ?
BLACK BOX : 我々を女艦長に会わせるつもりです

力強い立派な船だった…かつては。最上位のコヴナントの戦艦。でも預言者を失ってからの年月は、この船にとってはつらいものだった。傷だらけの船体には、略奪行為によって手に入れた他の船の部品をつなぎ合わせていた。この先に何が待ち受けているかは分からなかったが、私たちは殺されずに済んだ。そして船はまだ移動していなかった。少なくとも、そのように思えた。スリップスペースに入る時の馴染みのある不快な振動は感じていなかった。
MAYA : ブラックボックス、何か役に立つ情報はある?
BLACK BOX : 私の記録によると、この船は“献身”と呼ばれているようです
CHUR’ R-ZAL : いや!違う!

突然、私たちの前に女艦長が現れた。

CHUR’ R-ZAL : 献身。コヴナントの名前。私の船!私の名前!
BLACK BOX : 大ざっぱに訳すと、女艦長は“荒ぶる地獄”への乗船を歓迎したいようです

チャール・ザルは今まで見たキグ・ヤーの中で一番大きく、その皮膚は古い皮のようで上半身は裸だった。彼女には海賊の暮らしが最も適しているように思えた。彼女は正体不明の生物の黒こげになった手足をかじっていた。
CHUR’ R-ZAL : 話せ!お前、貴重だと言う。価値は?私が奪う。今は私の物
MAYA : 口のきき方には気を付けた方がいい
(チャール・ザルがうなる)
CHUR’ R-ZAL : 私の船!お前、力ない。何もない!
BLACK BOX : 殺されたくないなら6万クレジットを払って自分の価値を証明しろと彼女は言っています
MAYA : クレジットが欲しいのか?私たちを自分の船に行かせてくれればクレジットを渡してやる
(チャール・ザルがうなる)
CHUR’ R-ZAL : 待たない!クレジット出せ!1時間後、頭を食う!次の1時間、次の頭!価値がある、お前生きる。価値がない…
(チャール・ザルがシューと声を発して脅す)

殺されるまでの1時間を、私たちは古びたコヴナントの独房で過ごしていた。船にあるすべての物がボロボロの状態だった。独房内を照らす唯一の明かりは、私たちを閉じ込めるエネルギーシールドのぼんやりとした紫の光だった。ボストウィックはエアロックの前で叩きのめされてから一言もしゃべっていない。彼女は衰弱し、怯えているようだった。

MSHAK : うう、みんな…ここにいるのは俺たちだけじゃないみたいだ
(ウヴァ・スロムが目を覚ます)

船には15個の独房があったが、キグ・ヤーは私たちをサンヘイリと同じ独房に閉じ込めた。
(ウヴァ・スロムが痛みで声を上げる)
MSHAK : やばい、やばいぞ!看守さん!聞こえる!?

サンヘイリは怒りながら立ち上がろうとするが、何かがおかしかった。近くで見ると彼は負傷していた。彼の脚はズタズタに潰され、腱が支えとなってぶら下がっていた。足元にはベトベトした紫色の血が大量に流れていた。私たちを攻撃しようとはしなかった。彼は死にかけていた。
MAYA : 落ち着いて!私たちは争う気はない
BLACK BOX : キグ・ヤーにやられたのですか?
UVA ‘SUROM : 弱く愚かなキグ・ヤーに、私を倒すことはできなかった。これは…リヴ ウルガ…
MAYA : どういう意味?
BLACK BOX : 該当する訳語はありません。おそらく古代の言葉で、一般的に使われる言葉ではないようです
UVA ‘SUROM : それは大地から浮かび上がった。破壊、死
MAYA : 待って、あなたは見たのね…
MSHAK : 異変のことだ!あれは何だったんだ?何を見たんだ?
(ウヴァ・スロムがサンヘイリ語で話す)
BLACK BOX : 彼は外交上の任務で植民地の1つにいたそうです。そこで異変を目撃し大きな傷を負った、ですがそれを言い表すことはできないようです。彼は古代の言葉を使って話しています。そして今は怒鳴り散らしています…悪魔のことを
MAYA : 悪魔?
MSHAK : マスターチーフのことを話しているんだ!
UVA ‘SUROM : お前たち人間が、この災いを我々にもたらした。悪魔に聖地を汚させた…その行為に対する結果だ
MAYA : “汚させた”というのはどういう意味?何を見たの?
UVA ‘SUROM : お前たちの悪魔…彼はお前たちを救うことはできない。これから起こる…もっと多くの災いが。これは…始まりに…すぎない
MAYA : 何の始まりなの?教えて!何の始まりなの?

サンヘイリは動かなくなった。4点で固定された顎が緩み、目は曇って焦点が合っていない。彼は死んでいた。

MSHAK : これからどうする?

私はただムシャクを見つめた。私たちにできることは何もなかった。もしかしたら、さらなる異変が起こるかもしれない。もしかしたらマスターチーフが関わっていたのかもしれない。でも自分たちの首が切り落とされようとしている今、それは他人事だった。

BLACK BOX : 不適切なタイミングかもしれませんが、自分たちの命は救えなくても、人類を救うことはできるかもしれません。マヤ、チップを渡してくれればデータをONIに送ることはできます…
MSHAK : 冗談だろ?何のために?奴らが真実を隠せるようにか?
BLACK BOX : 情報は複雑に絡み合うものです。仮説から真実を導き出すには、チップのデータとONIが所持しているすべての情報を組み合わせなければなりません
MSHAK : 勘弁してくれ!ONIは真実なんてどうでもいいと思ってる!
BLACK BOX : あなたに何が分かるというのですか!
MSHAK : 俺はこれまでにいろいろなことを見てきて…
BLACK BOX : 私には無限に近い知能があります
MSHAK : いや、違うね、お前はただのゾンビだ!
BLACK BOX : あなたは…話になりません!
MAYA : 2人とも黙って!真実が何よ!私たちには何もできない、そうでしょ?これが何かの始まりでも、人類が滅亡するとしても関係ないわ。私たちは死ぬの、今日ここで
BOSTWICK : いいえ。死なない

私はボストウィックの存在をほとんど忘れていた。
BOSTWICK : 私たちはこんなところで死ねない。みんなに伝えないと

突然ボストウィックが再び私に語りかけた。彼女の体には力がみなぎり、瞳の奥は激しい炎で燃えていた。

BOSTWICK : さらなる異変が起これば大勢の命が失われる。コロニーに警告して彼らを助けないと。ONIや他の誰かに真実を覆い隠されるわけにはいかない!やっと分かった。自分の存在より大きな何かと戦うべきだとFEROに言われた。あなたが私にそう言ったの。この異変は私たちの誰よりも大きな存在で、私たちにはそれを何とかする力がある。だからやってみないと!

私は信じられなかった。彼女はFEROが偽者だったという事実を目撃した。私がONIの操り人形だったことを彼女は気にしていなかった。彼女はまだ理想を信じていた。
MAYA : ボストウィック…
BOSTWICK : 私たちをここから脱出させて、あなたならできる

そこで突然、私たちの時間は遮られた。
(キグ・ヤーが入って来て、彼らの言葉でボストウィックを連れ出すよう命じる)
彼はギザギザの骨張った爪をボストウィックに向けた。キグ・ヤーの衛兵2人が彼女を掴んだ。私は突進しようとしたが、彼らの力には太刀打ちできなかった。
MAYA : ボストウィック!
BOSTWICK : FERO!FERO!FERO!

そして、ボストウィックは連れ去られた。私は独房の中を歩き回りながら考えようとした。彼女は死ぬ、彼らに殺される。それを現実にさせるわけにはいかなかった。今すぐに独房から出る方法を考えなければならなかった。完璧に機能しているコヴナントの宇宙船からは脱出不可能だが、この船は老朽化していた。私は独房を見回した。エネルギーシールドは正常に作動している。だが壁には…慌てて修理したような跡があった。戦闘で受けたダメージを、キグ・ヤーはその場にあった物で取り繕っていた。私は指で割れ目をたどった…
(マヤが壁のパネルにある裂け目を引っ張り、エネルギーコンジットをむき出しにする)

BLACK BOX : マヤ、何をするつもりですか?
MSHAK : ちょっと!それは…
MAYA : エネルギーコンジット!
MSHAK : ああ、オーケー、最高だ!これで俺たちは放射線を浴びながら死ぬことになる
MAYA : ブラックボックス、このコンジットから何か情報を得られる?
BLACK BOX : 理論上は可能です…
MAYA : それじゃ、あなたをこれに接続すれば…
BLACK BOX : それが恐ろしく危険なアイデアだということを裏付ける理由がいくつかあります。1つ目、電気ショックによってあなたが死ぬかもしれません。2つ目、電気ショックによって私が死ぬかもしれません。3つ目、UNSCのAIはコヴナントの宇宙船に接続することを固く禁じられています。しかし、すでにコンジットの方向へ移動しているあなたを物理的に止めることは私にはできないので、結局そのような結果になると考えています
MAYA : そうね
BLACK BOX : 友人同士であれば数百万ボルトの電流も耐えられるのでしょうか?もう一度、他の脱出方法を…
(マヤがブラックボックスをコンジットに差し込む。2度の電気爆破が起こり、2度目の爆発でマヤが部屋の反対方向へ吹き飛ばされる)
MAYA : うぐっ!

最初の衝撃は誰かに後頭部を殴られたような感覚だった。だがそれは序の口だった。二度目の衝撃で私は部屋の半分ほどの位置まで吹き飛ばされた。耳鳴りがし、筋肉は震えていた…でも心臓は動いていた。
MAYA : ブラックボックス?大丈夫?
(エネルギーシールドが消滅する)
BLACK BOX : 成功したからといって、今のが良いアイデアだったとは限りません

シールドは消えたが、船の他のシステムにアクセスすることはできなかった。ムシャクを格納庫に隠し、私たちは船の内部スキャナーを使ってボストウィックの位置を特定しようとした。

BLACK BOX : 二階層上にある生命反応を見つけました。ですが徐々に弱くなっています
MAYA : 彼女を置き去りにはしない

私は船内をゆっくりと進んだ、引き裂かれた隔壁、生きているように見える腐食した壁。
キグ・ヤーは鋭い感覚を持つことで知られていた。だからコヴナントは彼らに偵察任務をさせていた。音を出してはいけない。だが床には物が散乱していた。踏み出す一歩一歩が危険だった。少しでも間違った動きをすれば、彼らに八つ裂きにされる。
前方に開いたドアがあった。そこを通らなければならなかったが、部屋の中から漏れる光と動く影が見えた。私は慎重に近づき、中を覗き込んだ。
(部屋を埋め尽くすキグ・ヤーのわめき声や話す声が聞こえる)
汚い部屋の中には、数えきれないほどのキグ・ヤーがグループごとで輪になり、しゃがみ込んでいた。全員が興奮状態で、頭を上げ、周りを警戒していた。通り抜けようとすれば、すぐに見つかってしまう。そこへ別のキグ・ヤーが入ってきた。背が高く、体は引き締まっていて、明るい色の針毛が生えていた。おそらく将校だろう。
彼はずっしりとした大だるを運んでいた。そしてそれぞれの輪で立ち止まり、肉と目玉の入ったシチューを床にぶちまけた。それを見た瞬間、思わず吐きそうになった。それぞれの輪の前にシチューがまき散らされると、キグ・ヤーは狂ったように頭を突っ込み、他者を押し退けながら胃袋を満たしていた。私は彼らが食事に夢中になっていることに気づいた。最後の輪に食事が提供されると、私は急いで開いたドアを通り抜け、できる限りのスピードで整備用のハシゴを登った。
ボストウィックは私たちの真上にいるとスキャナーは示していた。でも私には彼女が1人でいるかどうかも、まだ生きているのかも分からなかった。
ハシゴを上まで登り、整備シャフトに身を乗り出し、暗闇に目が慣れるのを待った。次の瞬間、私の心臓は凍りついた。部屋はコヴナントの兵士で埋め尽くされていた。待ち伏せかと思ったが、彼らが動いていないことに気付いた。エリート族とブルート族が壁につながれ、彼らの手足や臓器は切断されていた。人間の海兵隊員も何人かいた。まるで剥製を通して語られる戦争の歴史のように、彼らは凄惨な絵画の一部になっていた。

MAYA : ボストウィック…

そして私は広間の端にあるテーブルにくくりつけられたボストウィックを見つけた。キグ・ヤーの執刀医がその上で道具の準備をし、彼女をコレクションに加えようとしていた。
武器が必要だった。どんな物でもいい。武器として使えそうなものが1つだけあった。ブルート族の頭蓋骨。真っ白で巨大な骨。私はそれを静かに持ち上げ、ゆっくりと彼に近づいた。
(マヤが湿った音と共にブルート族の骨で殴りつける)
最初の一撃で不意打ちを食らわせたが、彼はまだ立っていた。プラズマナイフを振り上げようとした彼を、私は何度も殴りつけた。ようやく彼は倒れたが、船内にいる他のキグ・ヤーに今の騒ぎを聞かれたに違いない。

BOSTWICK : はっ!くたばれ、鳥野郎!
MAYA : ボストウィック!急いで!ここから脱出しないと
(ボストウィックがキグ・ヤーの執刀医につばを吐く)
BOSTWICK : ええ、分かった。行きましょ

もうコソコソと動く必要はなかった。私たちは全速力で走った。船内はボロボロの装置と行き止まりの通路が入り組む迷路のようだったが、なんとか出口にたどり着いた。遠くに私たちの船が見えた。全速力で走り、貨物室のドアにたどり着く寸前で…彼女が飛び出してきた。 (武装したキグ・ヤーたちがマヤとボストウィックを包囲する)
私たちはチャール・ザルに捕まり、完全に包囲されていた。

CHUR’ R-ZAL : 価値ない!お前、嘘!騙した!時間の無駄!
(チャール・ザルがシューという声を発し、部下たちに命令する)
MAYA : 私たちを見逃すよう伝えているわけじゃなさそうね
BLACK BOX : 彼女の指示を正確に訳すのは難しいですが、あなたの目玉をえぐり出すことに関する話のようです

ハッタリで乗り切れる状況でないことは分かっていたが、試してみない理由もなかった。彼女に提供できるかもしれない価値のあるものが思い浮かんだ。
MAYA : 私たちの価値を証明するために質問させて。なぜこの船はまだスリップスペースに入っていないの?獲物を襲ったあと、その場に留まって反撃される危険を冒す海賊なんている?
(チャール・ザルが怒った様子でシューと声を発する)
BLACK BOX : 自分たちの船は超高性能だと彼女は言っています。抵抗する者は生き残れないと
CHUR’ R-ZAL : 逃げない。隠れない。強い!
MAYA : 嘘ね。私はこの船の状態を見た。スリップスペースに入らないんじゃなくて入ることができないのよ。エンジンが壊れているのに修理する方法が分からない。そうなんでしょ?
(チャール・ザルがうなる)

彼女は強力な戦艦を持っていたが、1つの星系に閉じ込められていた。小魚しか捕まえることのできないサメと同じ。
BLACK BOX : 素晴らしい洞察力です、マヤ。人間にしては。スキャンした結果、スリップスペース用のエンジンは使用不能になっています。おそらくキグ・ヤーが船を制圧する前に、安全対策システムが作動したためと思われます
CHUR’ R-ZAL : お前、直せるか?それなら、価値ある
MAYA : 直せるわ。その見返りに私たちと船を解放してもらう

彼女はうなり、身を乗り出した。キグ・ヤーはさらなる血を求めて襲いかかろうと、興奮状態のままチャール・ザルの命令を心配そうに待っていた。私も不安だった。最後の切り札に対して彼女がノーと言えば、私たちは全員あの恐ろしい壁につながれることになる。彼女が私に体を寄せた。彼女の吐き出す息が顔に当たる。私は息をしていなかった、だがひるむこともしなかった。

CHUR’ R-ZAL : 直せ…解放する


ダスク

太陽の光。鳥のさえずり。亜麻布と松材。カルト宗教が関わっていなければ、とても美しい一幕だった。


エピソードS2.05 第3の生命が輝く場所

仲間は閉じ込められ、マヤは安全な場所を思い出し、トライアドは反旗を翻す。

[デジタルログを文字化する]
私は手足を失わずに脱出できたことに驚いていた。でも船の艦長は私たちの状況を受け入れ、今度はキグ・ヤーの恐怖が迫っていた。私たちは生きていた。そしてありがたいことに、ジャッカルのテリトリーの外にいた。

BLACK BOX : アリのデータチップの分析が終了しました
MAYA : 今さら手を貸してくれるの?あなたは組織に忠実なタイプだと思ってた
BLACK BOX : 私は組織に忠実です。ですが、あなたがムシャクに分析を頼むと分かっていたので、私がやっても同じだと考えました。チップのデータと異変が起こる直前の4つの植民地の気象状況を示すデータの間に、ある共通点が見られました
MAYA : 共通点?どんな共通点だ?
BLACK BOX : 異変が起こるまでの間に、各惑星で特異な重力の変化と電磁波障害が発生していました
MAYA : つまり同じ異常が起きている星を見つけることができれば、次の異変を予測できるのね!ムシャク、一帯の植民地の気象状況と、これらの異常を照合できる?
MSHAK : もうやってるよ!付近にあるいくつかの星しか調べられないけど… 条件に合う惑星を見つけた。ライカⅢと呼ばれる惑星だ。統計的に言うと、この星の気象状況はこれからかなり悪い方向に向かう
BOSTWICK : 彼らに警告して避難の手助けをしないと。やるべきことをするのよ!
BLACK BOX : 進路を決定する前に報告させてもらいますが、私は発見した事実をONIの司令部にも送信しました
BOSTWICK : 何ですって!?
MSHAK : そいつを撃て!
BLACK BOX : 人口の多い惑星に壊滅的な被害をもたらす異変が起きようとしています。数えきれないほどの生命が危険にさらされます。彼らの防衛責任を負う政府に、そのことを知らせる必要がありました
MAYA : ONIはその星の人たちを助けたりしない!彼らを見殺しにするわ、それが奴らのやり方よ。あなたも知っているでしょ!
MSHAK : そいつを撃て!
BLACK BOX : はい、マヤ、私は知っています。ONIはライカⅢの人間を救いません、なぜなら救うことができないからです
BOSTWICK : そんなこと分からないでしょ!
MSHAK : 絶対にそいつを撃つべきだ!
BLACK BOX : UNSCは事態を収めるために部隊を送り込みます
BOSTWICK : “事実をコントロールするため”でしょ
BLACK BOX : 彼らの行動は、他の多くの植民地を不必要なパニックから救うことになります
BOSTWICK : 不必要?私には必要なことのように思えるけど
BLACK BOX : 1つ確実なのは、ライカⅢに住む大多数の者を避難させるのは手遅れです。彼らは助かりません、しかし他の者を救うことはできます
BOSTWICK : やってみないと分からないわ!

私は何年も英雄のフリをしていた。本来の自分以上のものを演じていた。私はいつも自分にそう言い聞かせていた、演じているだけだと。でもすべてを投げ出す覚悟をして私の前に立つボストウィックと一緒なら、私も信じられると思った。そしてそれを信じたなら、貫くことだってできるはず。マヤがするべきことは、とても不明瞭になっていた。でも、FEROだったらどうするか?その答えだけはハッキリと分かっていた。

MAYA : ライカⅢに向かって

スリップスペースを出ると、突然コックピットの窓が青と緑に包まれた。ライカⅢは地球のような惑星ではなく、まさに地球そのものだった。青々とした美しい自然があり、多すぎない程度に街が点在している。立ち止まってバラの香りを嗅ぐことなんて滅多にしないボストウィックでさえ感心していた。

BOSTWICK : あれは…すべて木?
BLACK BOX : 感傷的になるな
MSHAK : 地上には人がいるんだ
BLACK BOX : はい。大勢の人間がいます。だからこそマヤがどのようにして、テロリストとして知られるFEROの狂言にも思える予言で彼らを説得し、この10人乗りの輸送船で全員を避難させるのか興味があります。私は肉体を持たない存在ですが、それでも窮屈な状態になると分かります
MAYA : あなたの言うとおり、全員を避難させることはできない…でもそうする必要はないの。これから起こる異変がコンラード ポイントで起きたものと同じなら、被害の大部分は1つのエリアに集中する。私たちはそのエリアにいる人たちを避難させればいい
MSHAK : 何か異常が起きていないか地表をスキャンしている、もし気象状況が…うわっ!
(ロケットが船に衝突する)

最初の衝撃が突然起こり、私は浮遊する人工衛星に激突したと思った。でもその時、コントロールパネルに“見つけたぞ、FERO”というメッセージが表示された。

MAYA :イルサだわ

イルサ・ゼーン。身長2メートルを超えるスパルタンの失敗作で、UNSCに対する全面戦争を計画していた精神異常者。爆撃によって基地を破壊された彼女は私を追っていた。

BOSTWICK : どうやって私たちを見つけたの?
MAYA : 誰かに追跡させていたに違いない。今となってはどうでもいいことよ

私は対応策を考えようとした。戦闘能力は彼女の方が上。スリップスペースドライブを起動させようと思った時には、すでに遅かった。
(別のミサイルが船に衝突する)

BLACK BOX : エンジンを破壊されました

ムシャクが通信装置を手に取った。

MSHAK : あー、もしもし?1つ聞かせてくれ。もしこの船に君に対して何も悪いことをしてない人が乗っていて、君もそいつに対して怒っていないとしたら…
MAYA : そこをどいて、ムシャク
MSHAK : 念のため聞いてみただけだ!
MAYA : イルサ、聞いて。地上にいる入植者たちに危険が迫ってる。別の異変が起ころうとしてるの。それは…
ILSA (Over Coms) : お前が私をそこに導いた!感謝するぞ、FERO。地上で何が起こるにせよ、UNSCはそれを恐れている。それほど強力なものなら、お前に殺された私の兵士たちにとっても慰めとなるだろう。私はそれをコントロールする力を手に入れ、UNSCの喉元に突き立てて、はらわたを引き裂いてやる。そしてFERO…お前はここで死ぬのだ
(別のミサイルが船に衝突する)

急いで船を降下させたが、イルサの攻撃によって船のシステムのほとんどが破壊されていた。

BLACK BOX : マヤ、私に船のコントロールを
MAYA : どうするつもり?そうやって意図的に私たちを地上に激突させるの?
BLACK BOX : いいえ、あなたの命を救うためです。あなたにはこのスピードで降下する損傷した船を着陸させることはできませんが、私にはできます

大気圏の突入によって船が炎に包まれる音が聞こえた。とてつもないスピードで大気圏に突入した船は、いつバラバラになってもおかしくない状態だった。

BOSTWICK : 信じちゃダメよ。船が爆発しても彼は死なない。ONIで再起動してもらうだけ
BLACK BOX : マヤ、私はあなたが傷つく姿を見たくありません。あなたにこの船を着陸させることはできません。私にはできます。

船内の温度が上がっていくのを感じ、ドアシールが溶け始めているのが匂いで分かる。

MAYA : 分かったわ!やって!

船の制御をブラックボックスに預けて目を閉じると、体にかかるGが強くなった。
そしてすべてが…真っ暗になった。真っ白だったかもしれない…思い出すことができない。すべてが…ぼやけている。何も思い出せない。思い出そうとすればするほど消えていく。唯一ハッキリと見えていたのは炎。それから地面…そして空…
次に覚えているのは肌に当たる冷たいシートの感覚。それから草の香り、溶ける雪。目を開けたくなかった。すべてが心地よく、安堵に包まれていた。一瞬、すべて夢だったのではないかと感じた。小屋の奥で私は目覚めた。もうすぐ父が入って来て、静かな声で私を起こす。彼の声を聞きながら私は目を開けた。
DASC : おはよう、お嬢さん

朝日の柔らかな光が優しく静かに彼を包み込んでいた。彼は私の前に立っていた。最初に目にしたのは愛情に満ちた眼差しだった。彼の視線から逃れられなかった。徐々に視界がはっきりとしてきた私は、しっかり彼を見た… 青白い肌、口の周りには灰色のヒゲを蓄え、眉毛はなかった。彼のことは前に見たことがあった。隠れ家にいた時、ムシャクが見せてくれたビデオに映っていた人物。ダスク・ジェヴァディム。カルト集団トライアドの教祖。

DASC : もう大丈夫、心配しないでいい。君は安全だ。守られている

すべての情報をつなぎ合わせようとした。船が墜落し、生き残った。トライアドが私を見つけ、ここに連れて来たに違いない。そして思い出した…

MAYA : ボストウィック!ムシャク!

私は急いで立ち上がったが、そのせいで頭がズキズキした。そして再びベッドに倒れた。

MAYA : うう…
DASC : ゆっくり、ゆっくりです、お嬢さん。あなたの痛む体、乱された心… 激しい衝突を生き延び、苦しみに耐えてきました。でも今は癒やしを求めることができます。あなたの友人は生きています、あなたも生きています。あなたたちはここにいて全員安全なのです
MAYA : みんなに会わせて
DASC : すぐに会わせてあげますよ。私は今、とても高揚しています。あなたがここにいるという事実は、決して偶然ではありません。この宇宙は常に我々を調和へと導いています。それは操られているわけでも偶然でもなく、必然的にそうなっているのです。我々はもうすぐ、その消滅点に到達します。この最後の歩み寄りによって、集束の果実は急速に成熟しています。そして今、あなたは雲の中から轟音を立てながら我々のもとへ降りてきた!ひゅー、シュー、ドカン!それを見た私は崩れ落ち、自らの疑念は畏敬の念に屈し、炎によって恍惚を感じ、生き残ったあなたが何者なのかを聞きました!あなたが何者なのか私は知っていた!
私はゾッとした。彼は私が誰だと思っていたのか?私に向けられる温かく穏やかな笑顔…それが恐ろしく危険なものだと感じ始めた。
DASC : ついにその日がきた。超越が我々のもとに。偉大なFEROが空から降りてきた、何とか間に合った
MAYA : どういうこと…
DASC : 慎ましい瞬間を謙虚な気持ちで迎えている
MAYA : 何に間に合ったの?
DASC : ダメですダメです!静かにしてください、お願いです、喋らないで。あなたの心に存在する光り輝く蜜を口から逃すわけにはいきません、その言葉は後世へ伝えるために解放されるのです。私と一緒に来て、測定を受けてください。あなたは自分が今、どれだけの慈悲を与えているのか気づいていない

私は彼の言葉を理解しようとしたが、まだ頭が目覚めていないようだった。それに気づく前に、彼は私の手を掴んで立ち上がらせ、明るい朝日の中へと歩いていく。私が状況を理解するよりも早く、物事は先へと進んでいた。
トライアドの野営地は、木がまばらに立つ森に囲まれた小さな空き地にあった。いくつかの常設された建物が周りに見えたが、そこにいた多くの人は到着したばかりのようで、テントを張ったり、屋外に生活する場所を設置していた。男も女も子供も全員、シンプルなローブを着て腰の部分を帯で締めていた。私たちが通ると彼らは唇を結んだまま微笑み、頭を下げた。全員が短く平らに切った同じ髪形をしていて、眉毛を剃り、その目は夢想的な光で輝いていた。まるで異様な形で私的な何かを共有しているように感じた。数人の中年の男が向きを変えて坂を転げ落ち、子供のように踊り大量の汗をかいていた。人々は自分の腕を相手の腰に回し、額を押し付け合って鼻歌を歌っていた。木々の中から子供の泣き声が聞こえたが、誰も気づいていないようだった。この平和的な状況の裏で… 何かが地表の下で泡立ち蠢いていて、恐ろしい何かが爆発しようとしているように感じた。ダスクはこの非現実的な世界を案内しながら、彼の信者たちに父親を感じさせるようにうなずいた。頬をなでる爽やかな空気によって、私の脳が目覚め始めた。そして私はずっとダスクの手を握っていたことに気づき、不快な気持ちになった。

DASC : コヴナントが我々の銀河で優位な力を手にしていた時、彼らは神託神殿を崇めニューエイジを先導する3人の預言者が作った序列によって支配されていた。これらの序列によって連続性と指導者を理解することはできたが、自らの傲慢によって古文書の理解を誤り、実際に3人の預言者の命令が1つになると自分たちの指導体制が物理的なものになると信じていた
ダスクは私を小さな部屋に導いた。中を見ると、机の上に古い医療器具が並べられていた。
MAYA : これは?
DASC : 簡単なテストです。衝撃も負担もありません。何かを変えることなく、これが終わればここを離れることができます。どうぞ、座って

机を挟んでダスクの反対側に座ると、彼の信者の1人が古びた鉄製の奇妙な装置を私の手と頭に置いた。ダスクは私から目を離さなかった。ずっと微笑んでいた。私は測定の準備をしている男を見た。彼の顔は必要以上に私の近くにあった。絶望した目の周りにはくまがあり、完璧なまでに滑らかな肌で冷たい笑顔を作っていた。彼の口は胆汁のような匂いがした。私は息を止めた。

PARSON : 今日という日の壮麗さが私の骨を光で満たし、永遠に謙虚な気持ちとなる
DASC : 輝きをありがとう、パーソン

男はかがんでダスクの頬にキスをし、手を自分の心臓の上に置いて壁にもたれかかった。そして不快な笑顔を見せた。
DASC : 私について何を知っていますか、FERO?
MAYA : あなたは宗教指導者だ
DASC : それらは遠方の判定者が伝えた空虚な言葉だ。私について何を知っている?
MAYA : 人は3つの精神生命を持っていて、あなたは自分の信者たちにそれらとつながるよう勧めている。そうすれば超越を達成できると言っている。そして今起きている異変は片道切符だと信じている
DASC : 素晴らしい。しかし、口を満たす言葉はあなたの心から来ているものではない。なぜ真実に対して抗おうとする?
MAYA : あなたの話はデタラメだと思っているからよ

その言葉は信者たちを怒らせたようだった。ダスクが手を上げると彼らは怒りを静めた。

DISCIPLES : 平和を… 平和であれ!
DASC : どうぞ。続けて
MAYA : あなたは…自分を正当化する信仰体系を作り出し、それを神秘的思想で覆った。そしてそれを使って絶望した人々を食い物にしている
DASC : 私は誰も食い物になどしていない。ここにいる者は全員、自らの意志でここに来た。そして…
MAYA : ここにいる者は全員あなたに合図を待っている、なぜならあなたの個人的指導を常に必要とするよう信じ込ませたから。そうやって組織を作り上げた。あなたは常に目標を作り出している、そうすれば彼らも常にあなたを必要とするから。つまりあなたは搾取するペテン師。実際に…私が何を考えているか分かる?
DASC : 分からない。教えてくれ
MAYA : この星で異変が起こって、あなたたちは全員死ぬと思ってる。それから、今すぐ私の友人がどこにいるか教えないと、この場所をメチャクチャにして…
ダスクの目が部屋の角にいた信者たちの1人に向けられた。彼らはすぐにムシャクを部屋に連れてきた。
MAYA : 無事だったのね、ムシャク!
MSHAK : FRRO?よかった!
MAYA : 大丈夫?
MSHAK : ああ、俺は元気だ。なあ、彼らがくれたこのイケてるローブを見てくれ
MAYA : そう。よかったわね、ムシャク。ボストウィックはどこ?

ムシャクが厳しい目つきで私を見た、そしてわずかに自分の頭をダスクと部屋の角で話している他のトライアド信者に傾けた。ボストウィックの居場所を彼らに知られたくないようだった。
MSHAK : ボストウィック?ああ、彼女は…外で新しく到着した人たちの手助けをしてる

彼は怪しい様子を少しも見せなかったが、私はまだボストウィックの居場所が分からなかった。私が質問する前に、再びダスクが話しかけてきた。

DASC : 私には君の中にあるすべての苦痛が見える、FERO。君は大きな喪失を味わい、2つのまったく異なる、決して交わることのない人生を生きている。それらを1つにし、第3の自分を受け入れる時が来たのです。それが本当の平安を見つける唯一の方法です
MAYA : どうやってここで異変が起こることを知ったの?
DASC : それがやって来ると聞いた。耳を傾ければ、超越は我々全員に歌いかけてくれる。そう、あの声は…宇宙に対する嘆きの声、そしてそれはほかならない必然性を私に教えてくれる。我々は人類が生まれ変わる瞬間を目撃しようとしている。私と共に自己増大を信じる者は真の安らぎを見つけ…

私に近づくと、彼の顔から笑顔が消えた。

DASC : そして自分自身に執着する者は切り裂かれる。だが心配はいらない。私はそれを食い止めるつもりだ

一瞬で彼の顔が再び明るくなり、すばやく振り向くと信者たちと共に部屋から出て行った。
MAYA : ムシャク!私たちも急がないと
MSHAK : ああ…

ドアの方を向くと、部屋の中に数人の男が入って来ていて、外にも衛兵が立っていることに気づいた。ダスクは私たちを解放するつもりはなかった。部屋を見回して他の出口を探していると、外にいる男たちがうめき始めた。

DASC : 叫べ、叫ぶのだ、子供たちよ!そうだ…それでいい!

ダスクが再び部屋に入って来て、私に手を伸ばした。

DASC : FERO、空から降りし者よ、立ち上がり私に加われ。証言をする選ばれし幸運な者

彼らはムシャクと私を空き地へ連れ出した。信者全員がそこにいて、うなり、腕を伸ばしていた。彼らが何に向かって手を伸ばしているかは分からなかった。その岩を見るまでは。
MSHAK : なるほど…これは普通じゃない

岩、小石、枝が浮き上がり、私たちの周りを浮遊していた。私は地面にある足が軽くなり始めるのを感じた。

BLACK BOX : 重力の乱れ…
MAYA : 始まるわ。逃げないと

固定されていない周辺の物体が、あちこちで浮かんでいた。

DASC : 宇宙に存在する愛しい子供たちよ…

振り向くとダスクが空き地の真ん中に立っているのが見えた。信者たちが周りに集まっている。すると突然、ダスクが地面から1メートルほど浮かび上がった。彼の目は空を見ていた。

MSHAK : えーと、これは現実か?
DASC : 因果と粒子が織り成す偽りの次元の中で、我々の内なる力は従順で静か。有機体の目には見えず類人猿の心には告げられない次元へと脱却する重力のように、我々はこの薄膜を超越してさらなる高みへと昇る。今が虚無となり、不幸が存在しない場所。我々は第3の生命が輝く場所へとたどり着く

私たちの頭上に浮いたダスクと同様に、数人の信者の足がゆっくりと地面を離れ、空へと浮かび始めた。
そしてダスクは下降し、真っすぐ私を見た。

DASC : 終焉が始まった


分裂

このような結末しかなかったのだろうか?他にも道はあったはず。だが起こったことが事実となる。たとえONIであっても、その真実を消すことはできない…


エピソードS2.06 超越

マヤは真実を伝えるため、すべての危険を冒す。異変の真相が明らかになり、新たな英雄がライカⅢに誕生する。

[デジタルログを文字化する]
DASC : 我々の肉体は衛星の殻、周回をして…

それはすでに起こっていた。異変が始まっていた。ダスクと彼の信者たちは私たちの周りを浮遊していた。私はムシャクの方を向いた。

MAYA : ムシャク。今すぐにここを離れないと

だが彼は何も答えなかった。ただその場に立ちつくし、周りに浮かんでいる石を見上げていた。口を大きく開けたまま。

MSHAK : 俺たちは死ぬんだ
MAYA : いいえ。死なないわ
MSHAK : 俺たちは死ぬんだ。
MAYA : 教えて。ボストウィックはどこ?
MSHAK : 俺たちは死ぬんだ
MAYA : ムシャク!

彼の答えを待つ必要はなかった。ワートホグが森の中を駆け抜けている音が聞こえた。車両が木々の中から飛び出し、私たちの前で横滑りして止まった。

BOSTWICK : 脱出するわよ!
MAYA : ボストウィック!
BOSTWICK : 早く、乗って!

ムシャクをつかんでワートホグに飛び乗り、ボストウィックがアクセルを踏み込むと、ダスクと彼の信者たちの姿が遠ざかっていく。町へ向かう曲りくねった山道でスピードを落とすと、浮遊している石や枝がフロントガラスを叩く。

MSHAK : ちょっと!やっぱり異変で死ぬ方がいい…あんたの運転で死ぬくらいなら

時間がなかった。町に住んでいる大勢の人は、自分たちが眠れる巨人の上にいることなど知る由もなかった。

BOSTWICK : オーケー!それで、どうするの?
MSHAK : 仮に巨大で邪悪な何かが目覚める前に町へ着いたとして、どうやって彼らを助けるんだ?町全体に警告しなきゃいけないんだぞ、火災警報器を鳴らしたって無理だ!
BLACK BOX : ムシャク、あなたは凡庸なシナプスを持つ天才かもしれません!火災警報器はありませんが、他の種類の警報機ならあります
MAYA : コヴナントの空襲警報ね!

私たちが避難させる方法を考案する必要はなかった、なぜならUEGがすでに考えていた。コヴナントとの戦争中、人類の住むコロニーが次々とガラス化されていた時に避難システムが開発されていた。

BLACK BOX : 町の郊外にある古いシャトルポートへ行けば、コロニーのAIを上書きしてコヴナントの襲撃を装うことができます。すぐに警報システムが作動して避難手順が実行され、すべての使用可能な船が自動的に作動します
MAYA : ボストウィック、危ない!

彼女がブレーキを踏むと、ペリカン輸送機が車両の前に降りてきた。後部格納庫は開いていて、再びUNSCの警官を相手にすることになった。

WILEY : 両手を頭に置いて、ワートホグから出てこい!
MAYA : まったく、うっとうしい連中ね!
BOSTWICK : どうするの?
BLACK BOX : 彼らと一緒に行動する選択肢もあります
WILEY : ワートホグから出てこい!
MAYA : そんなことできると思う、ブラックボックス?彼らが裏切り者をどうするかはあなたも知ってるでしょ
BLACK BOX : はい、知っています。ですが我々は…
GREY : 敵襲!
WILEY : 回避!

それは一瞬の出来事だった。65ミリ・アージェントVミサイルが私たちの頭上を通過してペリカンの右エンジンに命中し、機体は轟音をあげながら地面に墜落した。振り返って見るとイルサがいた。改造されたワートホグの後ろに立っていて、その存在感は大きく恐ろしくなっているように感じた。圧倒的な力を持つODSTでも、イルサを止めることはできないようだった。

WILEY : 司令部へ!身動きを封じられ攻撃を受けている!
MSHAK : 彼女が追跡を諦めることはなさそうだ…
BLACK BOX : 鋭い洞察ですね、ムシャク
MAYA : 急がないと!

コロニーのAIはすべてのシステムを管理し、惑星に住む人間全員の防衛を任されていた。1週間あればムシャクがシステムをハッキングできたかもしれないが、そんな時間はなかった。

MAYA : ブラックボックス、どうにかできる?ONIに背いたからといって、青い煙になって消えることはないんでしょ?
BLACK BOX : 作戦に対する重要な判断は委ねられています。そしてこれは命令に背く行為ではありません。大まかに言うと、任務の遂行と互換性のある人命救助だと判断できます

町のあちこちで重力の異常が起こっていた。バスが1メートルほどの高さに浮かんでいた。水は魔法にかかったヘビのように排水溝から巻き上がっていた。私は何度も瞬間的な無重力状態を味わい、そのたびにワートホグが地面から浮き上がっていた。私たちは異変の発生地点の近くにいた。人々は慌てて避難していた。
私はコンラード・ポイントで見たクレーターを思い出していた。生物のいない巨大な穴。この場所も間もなく同じ状態になろうとしていた。

MAYA : あそこよ。前方にある

ボストウィックの運転するワートホグが古いシャトルポートへと入って行き、並んでいる民間の宇宙船の横を通り過ぎる。見上げると頭上には巨大なアンテナの付いた古いコントロールタワーがあった。その時、すべてのものが震え始めた。バランスを崩して後ろに倒れると、地面が大きく割れて、数機の輸送船を飲み込むのが見えた。

MAYA : すぐに警告しないと。ブラックボックス、ローカルシステムに入り込める?
BLACK BOX : はい。しかしここからではできません
MAYA : どうして?タワーに着いたんだから、あとは…
BLACK BOX : シャトルポートのコントロールタワーは上空の人工衛星に放送電波を発信するだけです
MAYA : 何ですって!
BLACK BOX : 地上に信号を送ることはできません
BOSTWICK : それじゃ何のためにここに来たの?
BLACK BOX : 星を離れるためです
MAYA : 何を言ってるの?ダメ、まだよ。ここから私たちが呼びかける
BLACK BOX : 警告しても無駄です。このエリアの地震データを確認しました。マヤ、残念です
MAYA : 嘘をついたのね!
BLACK BOX : すでに手遅れです
MAYA : なぜ嘘をついたの!それじゃ、ここにいる人たちは… そんな!

町は引き裂かれていた。割れてギザギザになったアスファルトの残骸の中を人々が逃げ惑っていた。より安全な場所へ逃げるために他人と争う者もいた。その他の者はただ見ていた…混乱したまま。そしてその時、町の中で戦闘が発生した。
UNSCは通り沿いの戦術的に優位な位置を確保していた。だが攻撃対象は私たちではなかった。NCAが現れ、激しく抵抗していた。イルサ・ゼーンがODSTの1人に突進し、彼を破城槌のように叩きつけていた。

ILSA : 立て!
NCAがUNSCの動きを封じ、イルサは視界に入る者を皆殺しにしていた。私たちは身動きが取れなかった。
BOSTWICK : 行きましょ!戦って道を切り開くしかない!
MAYA : いいえ、そんな時間はないわ。この場所は崩壊する
BOSTWICK : 隠蔽工作が行われるだけよ!ここにいる人たちの死が無駄になる。ONIは真実を消して、何も起きなかったことにする
MSHAK : 急いで船に乗らないと、争ってる時間はない!

だがボストウィックの言っていることは正しかった。私たちがこれまで体験し、見てきた真実がすべてなかったことになる。目の前にある町は… 銀河で一番新しい名もなき墓になろうとしていた。私は移動しようとしたが、足が言うことを聞かなかった。恐怖で立ちすくんでいた。頭が理解するよりも前に体が反応していた。

MSHAK : マヤ、俺たちは…
MAYA : 私はここに残る
全員が振り返って私を見た。気が狂ったと思っていたに違いない。でも私はこれまでと違って落ち着いていた。
MAYA : 今ここで離れたら、この星で起きた真実は闇に消える。それは止めなければならない。真実を放送して、他のコロニーにいるすべての者にこの星で起きたことを見せる。無視できない事実だということを明らかにする
BLACK BOX : マヤ、今のあなたはまるでベンジャミン ジラウドのようです。彼がどうなったか、よく思い出してください

私はベンを裏切った。でももし裏切っていなかったら… もし彼のメッセージが多くの人に届いていたら… すると突然やるべきことが明確になった。私は真実を伝えなければならなかった。それが真実かどうかの判断は聞いた者に委ねる。

BLACK BOX : あなたは何を成し遂げたいのですか?混乱や恐怖を生み出すことですか?文明の崩壊ですか?人々に殺し合いをさせることですか?ONIはあなたが信じているような配慮に欠ける巨大組織ではありません。慎重な計算が行われています。不快な行いかもしれませんが、より良い未来の創生を目的とした理性的で理論的な計算です。この星の出来事が知れ渡れば、他の多くの場所で混乱を生み出すことになります。これらの異変が何であれ、すべての星系が内紛と恐怖によって麻痺した状態で、どのようにしてUNSCは巨大な脅威に立ち向かうのですか?
MAYA : それらの計算を自分たちで行う時が来たのかもしれない
BLACK BOX : あなたの放送は誰にも届きません。異変が発生すると、すべての通信が途絶えます。コンラード・ポイントのように
MAYA : そのとおりよ
コンラード・ポイントで起きた異変は、すべてのハイテク通信装置を使用不能にした。でもアリはローテクの機器を利用した。ラジオ通信を使ってメッセージを送っていた。
MAYA : 古いコントロールタワーを使うわ。ボストウィックとムシャクは宇宙船で周回軌道へ上がって、私が送る放送を他のコロニーへ安全に中継できる高度に留まって
MSHAK : マヤ、それは自殺行為だ!
BOSTWICK : 私が1人にはさせない
MAYA : ボストウィック、いいの。残るのは私だけで…
BOSTWICK : ふざけないで!2人でやるのよ
MSHAK : どうかしてる
BOSWTICK : うまくいくはずがない。私たちは発生地点に近すぎる!この場所は崩壊するわ
MAYA : あなたは行って、ムシャク
BLACK BOX : 私には船に乗るという選択肢は与えられていないようですね
MAYA : あら、一緒に来たくないの?
BLACK BOX : この惑星の物理学的にも電磁気学的にも一番危険なエリアの中心地にですか?最高の目的地です
船のエンジンが始動し、ムシャクが不満そうに私の方を向く。そして…
MSHAK : なあ、マヤ、1つ言わせてくれ。俺を殺そうとした連中の中では、あんたが一番いい奴だった

ムシャクが急いで出発し、ボストウィックと私はコントロールタワーへ向かった。再び地面が震える。どのくらいの時間が残されているのかは分からなかった。

BLACK BOX : マヤ、あなたの自己犠牲は無駄になります。ONIは放送電波を発見し、それを妨害して信頼性を傷つけます。最終的には誰もあなたのことを信用しないでしょう
BOSTWICK : だからこそ人々にあなたのことを信じ込ませる必要がある。彼ら自身が、この場所にいるように感じさせるの。あなたが目にしている事実をすべて伝える。FEROが聞くべきことを伝えてくれるなら、彼らは信じるわ

2段飛ばしでタワーの螺旋階段を上ると、ガラスの壁に囲われた制御室が現れた。古びた装置は今も作動していた。私は最後にもう一度、窓の外の崩壊した町を見た。口元にマイクを当てる。

MAYA : みなさん、聞こえますか…声を聞いても私が誰だか分からないと思う。その… 私はいつも正体を隠していた。自分の言葉を歪め、他の誰かにしゃべらせていた。私よりも勇敢な、ベンジャミン ジラウドのような人たちに。私はFERO。それが多くの人が認識している私の存在。私は今、惑星ライカⅢのニューヘッドマークの郊外にあるコントロールタワーにいる。災難、異変… 人々がそう呼ぶ出来事が今ここで起きている。これは最初でもなければ最後でもない。これは…この異変は重力の異常から始まる。最初は…

町は破壊と死にあふれ、通りでは激しい戦闘が起こっていた。UNSCがイルサの率いるNCAと戦い、大勢の人間が命を落としていた。彼らの目的は人命救助ではなく、互いの組織を滅ぼすことだった。私は長い間、彼らの争いに巻き込まれ、もがいていた。その状況から脱出することができなかった、FEROとしても、マヤとしても。でも今は? これまでの人生で初めて、正しい何かをしていると感じた。世界をより良くするために何かを変えようとしていた。もう自分がマヤなのかFEROなのか分からなかった。でも1つだけ言えるのは、その時の私はなりたかった自分になっていた。なるべきだった自分に。

MAYA : 待って!地面のあちこちが裂けて、何かが出てこようとしている。ボストウィック、気を付けて!私たちは大丈夫、でもこの異変は… これが何にせよ、その力は強くなっている。どのくらい放送を続けられるか分からないけど、みんなに伝えたいことがあるの。私はみんなが思っているような人間じゃなくて…
BOSTWICK : FERO、町が… 見て!
MAYA : そんな… 信じられない!町が… 町の残骸が地中に沈んでいく。いえ、違うわ… そうじゃない。浮かび上がってくる… そんな… 地面が… 地面が浮かび上がってくる。その力に耐えられない地面がバラバラになっていく。それから… ビルがドミノのように倒れていく。この町には…外周植民地の未来を築く10万人の人々が住んでいた。ONIは数週間前から危険に気づいていた、ONIは知っていた、それなのに彼らは… 信じられないわ… この異変を引き起こしているもの、それは… 星の奥深くから浮かび上がってくる。あれは一体何なの… あれは機械だわ。太陽の光を遮るそれは… そんな… あれは…
(ガーディアンの放った衝撃波がコントロールタワーを揺らす。マヤが態勢を立て直そうとしていると、1発の銃声が鳴り響く)

MAYA : なに?ボストウィック!何をしてるの?
BOSTWICK : ごめんなさい、FERO…
ボストウィックを見ると、その手にはピストルが握られていた。彼女が撃ったのはラジオの通信装置だった。
MAYA : ブラックボックス、まだ送信できる?他に送信する方法は…
(ブラックボックスが電磁気障害の問題を取り除こうと悪戦苦闘する)
BLACK BOX : ダメです… 信号が消えました… それに… 電磁気の障害が…
BOSTWICK : 他に方法はない。どうして分からないの!
MAYA : 一体何の話をしているの?なぜ通信装置を撃ったの?まだ伝えるべきことが…
BOSTWICK : 必要なものはすべて手に入れているからよ
私は何が起きていて、彼女が何を言っているのか理解できなかった。彼女は正気を失ってしまったの?
BOSTWICK : あなたが私を騙していたことは許すわ。すごく怒っていたけど、今はもう違う。世界を変えるために何が必要か、今ようやく分かった

彼女はピストルを構えると、私の胸に向けた。私たちの後ろでは町が崩壊していた、そんな中でもボストウィックの注意は私にだけ向いていた。

BOSTWICK : FEROの物語はこうして終わらせるしかないの
MAYA : ボストウィック、何を言ってるの?私はFEROよ
BOSTWICK : いいえ、違う!あなたはただの人間。ONIは人間を殺す!あなたが生きている限り、彼らに見つかる。あなたを拷問して従わせる。私たちがそんなことはさせない。FEROは誰よりも偉大なの。彼女は思想。彼女は信念、私の信念なの!
MAYA : でもそれは真実じゃない。人々には真実を知る権利が…
BOSTWICK : 人々に必要なのは英雄よ!あなたが教えてくれたでしょ、武力の戦いではUNSCに勝つことはできないって。思想の戦いで勝つしかないって。私たちは真実のために戦っている、でも思想は武器なの。あなたや私では彼らを倒すことはできない、でもFEROの思想はそれを可能にする

それを聞いて理解した。物語は山火事のように素早く広がる。反乱勢力の英雄FEROはライカⅢで起きた異変によって死亡した。放送は記録され、銀河中で再生される。FEROが命を犠牲にして届けた放送を。彼女の最後の言葉は、人々に対する警告のメッセージだった。完璧なシナリオだった。

BOSTWICK : 分からないの?これはあなたが私に教えてくれたことよ
ピストルを握る彼女の手に力が入るが、引き金を引くことができなかった。彼女のあごが震えているのが見えた。
BOSTWICK : FERO、あなたは怖い?
FERO : ええ… 怖いわ。あなたは?
BOSTWICK : 怖いわ
緊迫した状況の中で、私は彼女を慰めたかった。彼女を抱きしめ、何も心配はいらないと伝えたかった。
MAYA : ボストウィック、私は… 私はただ…
(ボストウィックが発砲する。彼女とマヤが顔をゆがめる)

MAYA : 平気よ、落ち着いて。大丈夫だから…
彼女がもう一度銃を構える、その目には涙があふれていた。
MAYA : 撃って
BOSTWICK : さようなら、マヤ
(ボストウィックが再び撃ち、マヤに命中する)

私は後方に崩れ落ち、割れた窓から落ちた。体が地上の方向を向くと、ものすごいスピードで地面が近づいてきた。そして私は…死んだ。

BLACK BOX : 他に思い出せることは?
MAYA : いいえ、ないわ。そこで終わり。それが最後の記憶よ。
BLACK BOX : 分かりました、ですがあなたの報告には抜け落ちている部分があります。ボストウィックの考えについて、どう思いましたか?彼女の意見に賛同しましたか?
MAYA : 理解はできた。彼女はより良い未来のために不快な計算を行った。生きている私に価値はなかった。FEROは大義のために死ぬ必要があった。マヤは… 自分の裏切りを償いたかった
BLACK BOX : なるほど。分かりました。ありがとうございます。あなたの記憶はとても有用でした。それではこれで…
MAYA : 待って!1つ質問をしても?
BLACK BOX : 私は行かなければ…
MAYA : お願い… 聞きたいことがたくさんあるの
BLACK BOX : 若いあなたにとって、それは自然なことです。分かりました。あなたの質問は何ですか?
MAYA : 彼女はできたの?
BLACK BOX : できた?何をですか?
MAYA : FEROは殉教者になれたの?彼女の物語は大勢の命を救ったの?私のアクセス権利はまだ制限されているから分からないの、私は本当に…
BLACK BOX : 残念ですが制限されているのには理由があります。私は必要とするものはすべて持っています、だからあなたを返さなければ…
MAYA : もう1つだけ聞かせて、お願い
BLACK BOX : どうぞ
MAYA : この場所は何?
BLACK BOX : 待合室だと思ってください。心配はいりません。説明する時間はあります。あなたは次のステップに進む準備ができていると彼らに伝えます。いつまでも棚に置かれていることはありません。我々はとても高価ですから
(ブラックボックスは最終報告書を送るためにマヤから離れる)

BLACK BOX : オスマン提督、ブラックボックスです。ライカⅢで起きた一連の出来事に関して、サンカー諜報員の生体信号は軍事標準時間15:34に失われました。死亡原因は胸に受けた銃弾の傷。戦略的プロパガンダを目的とする反乱勢力のリーダー・ボストウィックに殺されました。次の演説は潜入諜報員が彼女の最新の活動を録音したものです。

BOSTWICK (Recording) : 私たちはFEROの犠牲を決して忘れない!これ以上、他の町が消滅することも、女性や子供たちが殺されることもない!FEROは真実を届けるために、ライカⅢで命を捧げた。私はその場にいた。彼女の横で共に戦った。他の者が何と言おうと、彼女は私たちと同じ純粋な人間だった。彼女と私は似た境遇のコロニーで生まれた!私たちが一丸となって立ち上がれば、どんなことでも成し遂げられる!
(ブラックボックスが録音音声を止める)

BLACK BOX : サンカー諜報員の放送を封じ込めていた間に、FERO殉教の知らせは外周植民地中に広がっていきました。彼女はONIの諜報員だったという情報を数人の友好的なジャーナリストにリークしましたが、ボストウィックが予想したとおり、作られたFEROの物語の方がマヤ・サンカーの真実よりも影響力が大きいようです

幸いなことにサンカー諜報員の脳は無傷でした。私が予測したとおり、彼女はAIとの同化に最適なタイプの人間でした。彼女の脳から集めることができたデータは、10月28日の出来事を考えると有益でした。このログに満足してもらえたことを願います。暴走した諜報員の行動だけでなく、彼女の思考や感情を記録する貴重な機会となりました。引き続きいくつかの記憶を探ってみますが、報告書は今回のものが最後になると思われます。ブラックボックス、サインオフ。