「リアリティーを重視した」という枕詞をウリにリリースされたレースゲームというものは、これまでにもいくつもあった。しかし、本物のクルマの動きを物理的な側面から計算によって表現し、名実ともにゲームの中でリアルにシミュレートしているレースゲームの数は?と聞かれれば、それはひしめくレースゲームの中でもごく僅かだと言える。そして、この『Forza Motorsport』シリーズは、その僅かなゲームの中のひとつなのである。ここではまず、本シリーズの歴史を振り返りながら、ゲームの特徴を伝えていく。
2005 年、『Forza Motorsport』は、Xbox の演算性能をフルに使ったレーシングシミュレーションゲームとして誕生する。ウリのひとつは、言うまでもなくリアルなクルマの挙動だ。タイヤメーカーから実在のタイヤのデータを取り寄せたり、F-1 チームのエンジニアからアドバイスを受けたりするなど、リアリティーの追及には労を惜しまなかった。もちろん、それはクルマのみならず、コースにも注がれている。シリーズ 1 作目にかける労力として考えるなら、これらは異例とも言えるレベルのものである。
さらに描画にも徹底的にこだわり抜き、Xbox の限界とも言えるほどのディテールでクルマを再現させた。さらにそれがクラッシュなどによって"壊れる"という要素も取り入れているのである。当時の風潮からすれば、収録されている各自動車メーカーにとって、クルマが壊れる様を表現されることなど、ありがたいことではない。しかし、その許諾を取り付け、結果的に 230 車種を超えるクルマを収録した。
また、さまざまなチューニングパーツによって改造を加え、プレイヤーの個性をクルマに反映させるという、クルマファンならではのこだわり。これを受け止めるべく、チューニングに大きなキャパシティーを持たせた。これは当時からシリーズ最新作に至るまで受け継がれているコンセプトのひとつだ。
2007 年に Xbox 360 でリリースされた『Forza Motorsport 2』は、前作の遺伝子をしっかりと受け継ぎ、進化した作品となった。収録車種は 340 車種以上にまで増加し、コース数も増加。ハードの性能をフル活用し、前作を超えるグラフィックを実現させている。
そして、この 2 作目で『Forza Motorsport』シリーズをより有名にした のが、この作品から収録されたカスタムペイント機能だ。プレイヤーの個性をより強調させられるツールとして作られたこの機能を用い、世界各国のプレイヤーたちが何をしたか?そう、アニメやゲームのキャラクターを描いた"痛車"を作ったり、レーシングカーのレプリカモデルのようなクルマを作ったのだ。成したクルマのデータはネットを介してゲーム中で売買できるため、それらのクルマのデータは大きな人気を博す。そのムーブメントはゲームの中では収まりきらず、インターネット上でも大きな話題となった。
これによってリアルなクルマを操作する楽しさに加え、楽しい、おもしろいクルマをコレクションするという要素も加わった。もともと、初心者でもレースが楽しめるように気を配られていたシリーズではあったが、ユニークなクルマのデータを手に入れられることにより、ともすればクルマへの興味が薄い人でも楽しめるようになった。
シリーズ 3 作目の『Forza Motorsport 3』が発売されたのは 2009 年。より広いクルマファンに向け、更なるチューンナップを施してリリースされた。収録車種に関してはついに 400 車種を突破。サーキットやコースパターンの総数は 100 種類以上になり、さまざまなレースの楽しみかたに対応できるように進化した。その象徴とも言えるものがレースモードの追加。400 メートルをいかに速く走るかを競うドラッグレースや、美しいドリフトを獲得ポイントで競うドリフトモードなどが新たに加わり、クルマに関する総合的な遊びが可能になった。
また、レースゲームの裾野を広げるべく、これまで以上に親切な、初心者向けドライビングアシスト機能が追加されている。端的に言えば、アクセルを踏めてハンドルを回せればそれなりに走れるほどのアシスト機能を働かせることも可能となったのだ。もちろん、それらの機能を使わなければ、ドライビングの本質であるコントロールする楽しさも味わうこともできる。
3 つの作品を通して『Forza Motorsport』シリーズを観れば、それは偉大なる足し算の歴史だ。しかし、足し算をするのはあくまでも作り手側だけ。プレイヤーはいつでも引き算ができるようなシステムを構築し、さまざまなタイプのプレイヤーが自分にとって適正な数で遊ぶことができるようになっているのだ。リアルさや美しさが目を引く本作だが、プレイヤーに引き算をゆだねられる奥の深さこそが、本シリーズの魅力の本質である。